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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 特別編居場所なき淫魔とそれを支え続けた者
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品性下劣への宣戦布告

「まずは、お時間いただき、感謝いたします、キーアさん」


 席に座ったバルディは、キーアに軽く頭を下げる。

 …こんな相手にすら、礼を尽くすのか。複雑な表情で、バルディを見る。


 しかし、そんなバルディを見ても、キーアは変わらなかった。


「回りくどい礼などは不要ですよ。…それよりも…」


 キーアはそこで言葉を切ると、見定めるようにこちらをジロジロと見ている。

 …昔と変わらない、不愉快な視線だ。


「このような場に、随分と俗なお召し物でいらした方や…」


 キーアは明確に、ハイーラを見て俗っぽいと言い放つ。

 俗なのは否定しないが、このエプロンドレスは動きやすくて実用的だ。そんなことを言われる筋合いはない。ハイーラは顔をしかめた。


 キーアはそんなハイーラを鼻で笑うと、イアノへ視線を移す。


「…顔をお隠しになるような方を同伴されるとは…些か、無礼ではなくて?」


 明確に、イアノも見下している。

 イアノの表情は、仮面に隠れて見えない。だが、微かに見える口元は一文字に結ばれている。


 あまりに、気分が悪い。しかし、隣に座るバルディは、そんな言葉が聞こえていないかのように、頭を上げる。


「彼女達は、私が無理を言って連れてきた、ただの同席者です。無礼はお詫びしますので、どうか、お気になさらぬよう」

「ふぅん…」


 バルディの言葉に、キーアは醜悪な笑みを浮かべる。

 まるで、すでに勝ちを確信してるかのような、そんな笑顔だ。


 ーーー忌々しい。今すぐ引っ叩いてやりたい。


 机の下で、手が震えている。そんな衝動を、必死に抑えていた。


「それで?何かご用なのでしょう?」

「ええ。…どうやら、結論から申し上げるのが、お望みのようですね」


 キーアは醜悪な笑顔を貼り付けたまま、バルディに話を振る。バルディはそんなキーアの態度を気にしてないかのように、冷静だった。


 バルディは静かに頷き、持っていた茶封筒の中から、数枚の紙を取り出し、円卓の上にのせた。


「我々は、貴方がたを捕縛しに来ました」


 バルディが冷徹に言ったその瞬間ーーー


 キーア達の空気が、凍った。

 後ろに控えているキーア取り巻き達も、固まっている。


 しばらくの静寂の後、キーアが乾いた笑い声を出した。


「お、ほほほ…面白い冗談ですね。私達を、捕縛?そのようなことがあるはず…」

「では、この書類をご覧ください」


 バルディは、そんなキーアの言葉を遮った。

 そして、円卓のうえに置いた書類に手をかざすと、内容が拡大され、空間へと映し出される。


 ーーーこれなら、嫌でも取り巻き達に見える。


 そこに映し出されたのは、マールへの凄惨な仕打ちの記録の詳細だった。


「このマールさんという方に、心当たりはございますか?」


 バルディはキーアの目を真っ直ぐに見る。しかし、キーアはそれでも表情を崩さなかった。


「マール…。すでに、死んでいる者ですね。その者が、何か?」

「その者への、仕打ちの記録です」


 当然のように、マールを死者として扱っている。ハイーラの頭に、一気に血がのぼった。

 しかし、バルディは冷静だ。映像がさらにズームされ、詳細が読めるようになる。


「理不尽な理由での追放、該当者への集団暴行、そして、投石などの、継続的な加害行為…。全て、裏が取れていますよ」


 記録を見ると、仕打ちの内容だけではなく、場所や時間が詳細に記されており、ものによっては証拠写真などがあるものもあった。


 これだけの情報、よく調べられたものだ。何だか感心してしまい、ハイーラの頭の熱が少し引いた。


 しかし、認めざるを得ない証拠を見てもなお、キーアの笑みは崩れていない。


 記録を一瞥したキーアは、首を傾げていた。


「能無しへお仕置きを行うことの、一体何が問題なのでしょうか?」


 キーアは心底不思議そうにしていた。

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