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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 特別編居場所なき淫魔とそれを支え続けた者
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醜き闇と罪

 イアノは鼻歌を歌いながら、まるで散歩でもしてるかのような雰囲気で、のんびりと歩いている。


 これから向かう場所を分かっているのか。ハイーラは訝しげに、イアノの方を見る。


「ハイーラさん」


 そう思っていると、声をかけられる。声のした方を向くと、バルディが封筒の中身の一部を取り出していた。


 ーーー重厚な、書類の束だ。一体、どれだけの情報が詰まっているのだろうか。


 バルディはその中の一部を、ハイーラに差し出した。


「…これは?」

「おそらく、あなたも知らなかったであろう、マールさんご一家の罪状です」


 紙を受け取り、中身を確認してみる。

 目を通していくに連れ、ハイーラの顔は、青色に染まっていった。


「…ウソ、でしょ…!?」


 言葉が、うまく出てこない。


 書類には、ハイーラも知らなかった、マールの親族のとんでもない罪の、言い逃れできない完全な証拠が記されていた。


「…あの連中、ここまでして…!!」

「私も正直、ここまで腐っているものなのかと…」


 バルディですらも、かなり引いている。

 だが、それも無理はない。書かれていたのは、マールにとっての地獄を、さらに強固なものにしてしまう情報だったからだ。


 さらに書類をめくると、別の情報も記されている。

 それを見て、再びハイーラは絶句してしまう。


 表沙汰になれば、マール一家を根底から破壊してしまうような、そんな情報だ。


「…あなたには事前に、彼らの悪行を共有しておかねばと思いまして」


 バルディは言葉を紡げずにいるハイーラに、淡々と声をかける。しかし、あまりの衝撃で、ハイーラは完全に固まってしまってた。


「…むごい…」

「えぇ…。その怒り、私と共に…彼らへ向けましょう」


 バルディはそう言うと、ハイーラから書類を回収し、封筒にしまう。


 マールの一家が腐ってることは知っていた。まともな倫理観を持ってないことも。

 だが、ここまでのことをやってるのなら、もう、同情など不要だ。ハイーラは決意を新たに、歩き出した。


「バルディ」

「はい」


 前方を歩いていたイアノが、振り向くことなくバルディを呼ぶ。

 バルディは何かを察したかのように、懐から何かを取り出し、イアノに投げ渡した。


 イアノはそれを、一瞥すらすることなく受け取った。

 後ろから投げられたものを、全く見ずに受け取るとは…。一体、イアノには何が見えてるのか。


 イアノの手元に届いたのは、漆黒の仮面だ。舞踏会などでつけるような、目元を隠すタイプのもの。

 美しくたなびく黒髪に、黒い仮面。今は背中しか見えないが、それはイアノに相当似合っていそうだと分かる。


 だが、なぜそんなものを…。


「バルディ。今回の話は、あなたがメインで進めてくださいませ。私はあくまで、あなたの身辺護衛役です。いいですわね」

「構いませんよ。元々そのつもりでしたから。ただ…」


 相変わらずこちらを見向きもしないイアノに対し、バルディは平然とやり取りをしている。これが、普通なのだろうか。


 バルディは一瞬、間を置いた。そして、再びゆっくりと口を開く。


「…頃合いを見て、その仮面を外してくださいね」

「えぇ。最高に面白いタイミングで、外させていただきますわ」


 イアノはそう言いながら、仮面をつけた顔をこちらへ向ける。やはり、悔しいほどに似合っている。


「…ペルセちゃんのように、制度の穴に落ちた者のために苦しむデメナ様のお顔は、もう見たくありませんわね」

「え?」


 イアノは顔を伏せて、何かを呟いた。しかし、その言葉はハイーラに届かなかった。


「さ、そろそろ到着しますよ。準備はよろしいですか?」


 そう言っていると、バルディが前に出る。道の突き当たりに、趣味の悪いピンク一色の、大きな屋敷が見えてきた。


 ーーー相変わらず、忌々しい場所だ。

 ハイーラは自分の頬を叩き、気合を入れた。


「バルディさん」


 そのまま呼び鈴を鳴らそうとするバルディを、呼び止めた。

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