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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 特別編居場所なき淫魔とそれを支え続けた者
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友のための、決断の一歩

「ハイーラさーん、お客さんだよー」


 音を聞いて、台所にいるハイーラを呼ぶ。

 ハイーラはエプロンを外しながら、台所から疲れ切った様子で姿を現した。


「こんな時に、誰かしら?」

「バルディさんっぽいよ」


 なぜ、そう言えたのか分からない。しかしなぜだか、この気配はバルディであると、謎の確信があった。


「何で、分かるのよ…」


 ハイーラは呆れながらも、玄関を開ける。

 その先には、予想通りバルディがいた。しかし、その隣に、もう一人女性がいる。


「あ…イアノさん…」


 ペルセがサトゥニアに鍛錬のため行く際に、いつもペルセを連れて行ってくれる、優しい女性。

 キレイな顔立ちに、清楚な黒髪が肩まで伸びているのが印象的な女性だ。だが、今日は何だか、いつもと印象が違う。

 普段は、多少の露出を伴う、少し色気のある服を着ているというのに、今回はかつてマール達が着ていた『すーつ』を着用している。


 その表情は、いつもと変わらない。しかし、その優しさの影に、氷のような冷たさを感じた。


「…お疲れのところ申し訳ありません。マールさんの件でお伺いしました」


 バルディからそれを言われ、ハイーラは一気に目の色を変えた。 

 バルディは手元に大きな茶封筒を持っている。


「…随分分厚いですね」

「マールさんの件の調査資料です。あなたがたの言ったことが確認できました」


 バルディはハイーラの問いに対し、手にしてる封筒を見た。明らかに、ずっしりしていそうな封筒だ。


「もっとも…あなた達の話していた以上のことも、確認できましたけどね」

「…そう、ですか」


 ハイーラは、それ以上何も言えなくなったようだ。

 聞いた話だけでもかなり惨いものだったというのに、それ以上があったのか。


「バルディ、時間が迫ってますわ。そろそろ、本題に入らなくていいんですの?」


 隣にいるイアノが、口を開いた。いつも通りの、穏やかで綺麗な声だ。しかし、そこには若干の苛立ちが混ざっているようだった。


 バルディはその声を聞き、イアノを一瞬見た後、軽く息を吐いた。


「これから、マールさんの実家へと向かいます。共に、来られますか?」


 バルディは淡々と、ハイーラに話しかける。


 ーーー自分も、行けるのだろうか。そう思い、身を乗り出した。しかし、ペルセの体は自然と止まった。


 来てはいけない。

 視線も向けられていないのに、イアノからそう言われた気がした。


「…行きます。すぐに」


 先程までの、どこか荒れていた雰囲気とは違い、明らかに強い決意の滲んだ声色だった。


「かしこまりました。ついてきてください」


 ハイーラの返答を聞いたバルディ達は、そのまま背中を向け、歩き出した。


 ハイーラはペルセの方へ顔を向けてきた。


「…ペルセちゃん。少し出かけてくるから、マールを…頼んだわよ」


 その顔は、やはり寂しそうだ。マールほど強い叫びではなかったが、ハイーラの方からも、何かを感じる。


 歯を食いしばり、必死に耐えている。それだけは、分かった。


「分かった!行ってらっしゃい!!」


 あのマールを、今度は自分が世話をする番なのか。そう思うと、何でか分からないが気合が入る。


 何より、今のマールを、放ってはおけない。ペルセは、ハイーラの頼みに、強く頷いてみせた。


 ハイーラはそのペルセの様子を見て、頬を緩めた。そして、そのまま家を出ていった。

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