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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 特別編居場所なき淫魔とそれを支え続けた者
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恩人が奥底で出し続けた声

 ーーーあれから、数日が、経った。


 何だか、ハイーラとマールの仲が、少しギクシャクしている気がする。


 しばらく、ペルセの頭から、あの日の記憶が離れなかった。


 けれど、ペルセの胸には、何か引っかかっていた。


「…なに〜?私の顔になにかついてる〜?」


 気づいた時には、椅子にだらりと座るマールを見つめていた。


 今までのマールからは感じ取れなかった、違和感が強くあった。


 その表情はいつも通りだ。

 にも関わらず、その奥から別の声が聞こえてくる気がした。


「ほら、ご飯よ」


 その思考は、ハイーラの一声で中断させられる。だが、マールから聞こえてくる声が、どうしても、頭から離れない。


 あれはーーー悲鳴だった。

 暗闇で孤独にもがく、魂の絶叫。


 かつて、アンドレイスに襲われた時に、ダスノムの住人達があげた、耳をつんざくような、甲高い悲鳴だった。


 そんなものを聞いていては、席に座り、ご飯が並べられるのを見ても、どうにも食欲がわかない。


「…どうしたの?」


 全く手を動かさないペルセを、ハイーラが不思議そうに見つめてくる。マールの過去をあれだけ知っているハイーラは、マールのあげてる悲鳴に、気付いてないのか。


 それともーーー気付かないフリを、しているのか。


 そう思うと、声をあげずにはいられなかった。


「…マールさん」

「ん〜?」


 マールはのんびりとした様子で、ゆっくりとご飯を口に運んでいる。その様子に、ペルセは思わず泣きそうになる。


「この間から、様子がおかしいよ。何で、悲鳴をあげ続けてるの?」


 ーーーその瞬間、マールもハイーラも、手に持っていた箸を落とした。


 あれだけの悲鳴をあげていながら、なぜ、マールは落ち着いていられるのか。なぜ、ハイーラもそれに気付かないのか。どうしても、分からない。


 なぜ、今になってそれが聞こえるようになったのかは分からない。だが、聞こえてしまった以上、それを放置することはどうやってもできなかった。


「だって…おかしいよ…。何で、私を助けてくれたマールさんが、苦しみ続けてるの…?あの、過去の話が、関係してるんじゃないの?…どうなの!?マールさん!!」


 震える声で、マールに畳み掛けてしまう。

 そんなペルセに、マールは何も言えず、困った様子だ。


 だがーーーその目尻に、涙が見えた。


「…マール…アンタ…」

「………過去のこと…のはずだったんだけどね〜…」


 ハイーラが呆然とマールを見つめているのに対し、マールは顔を伏せた。


 ペルセも知らず知らずのうちに、目に涙が溜まっていた。視界が、少し滲む。慌てて、自身の腕でその涙を拭った。


 だが、マールは目尻に溜めた涙を、拭おうともせずーーーただ、うつむき続けた。


「…ごめん、食欲がなくなっちゃった。ご飯、また今度でいい?」


 しばらくして、マールはそのまま席を外してしまった。

 そして、それに気付いたハイーラも、食事を片付け始めている。


「ペルセちゃん…。アナタは、何も悪くない。悪いのは、隠し続けたアイツと………それに気付けなかった、アナタに気付かせてしまった、私よ」


 どうやら、ハイーラも食欲がなくなってしまったらしい。片付けをしているハイーラの声も、震えていた。

 ハイーラはそのまま、食器類を台所へ足早に持っていってしまった。


 自分は、まずいことをしたのか。

 しかし、あのまま助けを求める、マールの悲痛な声を聞き続けるのは、耐えられなかった。


 取り残されたペルセは、ふと玄関を見つめる。その先に、誰かがいる気配を感じる。


 ーーーまただ。何だか最近、やたら気配なんかを強く感じる。これは、一体何なのか。全く分からない。


 すると、来客を知らせる鈴の音が、静かな部屋に響き渡った。

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