表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
68/69

公的な認知

 あれから、数週間が経った。


 ペルセは変わらず、アスティアノでハイーラやマールと穏やかに暮らしていた。

 時に叱られ、時に笑い合う。ペルセの求めていた、平和な日常だった。


 時折、サトゥニアに呼ばれ、力の制御訓練を受けることはあったが、それ以外は特に、何も起きていなかった。

 制御が少しずつ上達してきたおかげで、またアスティアノの魔力玩具で、遊べるようになっていた。以前は手を触れるだけで止まっていた玩具も、今では問題なく動かせる。


 それも、楽しかった。


 平穏な日常を送る三人の家に、来客を知らせる、無機質な鈴の音が響いた。


「…お客さんだね〜」

「はいはい、行くわよ」


 鈴の音を聞いたマールが、ハイーラに声をかける。ハイーラは渋々ながら、玄関へと向かった。


「お忙しい所失礼します。バルディです」


 扉の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえてくる。


 ーーーよかった。不審者ではない。

 未だに、お客さんの顔が見えないと、少し怖かった。


 ハイーラはその声を聞き、迷いなく扉を開けた。

 そこには、相変わらず真面目そうな見た目をしたバルディの姿があった。


「え〜と…何か、ご用ですか?」

「そう身構えないでください。今回は、いいお知らせですよ」


 ハイーラは相変わらず、少し怯えている。しかし、バルディは優しい表情を浮かべている。


 ハイーラはバルディを家に迎え入れようとしたが、バルディがそれを無言で制した。


「ペルセさんはいらっしゃいますか?彼女に関して、いいお知らせを持ってきましたよ」

「へっ?」


 ーーー何だか、呼ばれた気がする。行った方がいいのだろうか。

 迷っていると、バルディが懐から何か書類を取り出した。


「…詳しくは後ほど、ご覧くださればと思いますが…」

「こ、これって…」


 書類を受け取ったハイーラが固まった。一体、何が書いてあるのだろうか。


「ペルセさんの正式な戸籍を、このアスティアノで発行できました。住所は暫定的ですが、ここの住所にしてあります。本来は別部署の案件ですが、あなたたちと面識のある私が伺った次第です」


 ーーーやっぱり、バルディの言ってることは、あまり分からない。

 戸籍とか住所とか、それがあったところで何なのか。


「…やっと、ペルセの存在が公式に認定された、ってことだね〜」


 話を聞いていたマールが、お茶を飲みながらペルセに語りかける。


 ーーーやっと、自分の存在が、ちゃんと認識された、ということか。

 よくわからないが、それでも嬉しくなった。


「彼女の住所は、ここで大丈夫ですか?」

「…えぇ。むしろ、それがいいです。ありがとうございます」


 自分が、堂々とハイーラの家に住める、ということか。

 ずっと、ハイーラと暮らせる。


 ーーーそれが、たまらなく嬉しい。


 しかし同時に、1つ気になることが頭をよぎった。


「そういえば、マールさんはここに住まないの?」


 その瞬間、ハイーラの肩が大きく震えた。


 自分の記憶が正しいなら、マールの家は今いるここではなかったはずだ。


「マールさんって、確かベリアスに家があるよね?」

「ん?ん〜、そうだね〜」


 マールは平然と答えている。しかし、その話を聞いたバルディの目つきが、少し鋭くなった。


「…アスティアノから、ベリアスに…?」

「あぁ…もう…!!」


 バルディの様子に、ハイーラは肩を落としている。何かを諦めたようだ。


 アスティアノからベリアスへ移動したことが、そんなに変なことなのか。不思議そうにバルディを見つめると、バルディはハイーラに目を向けた。


「少し、ご事情を伺っても?」

「…はい…」


 ハイーラは観念したように、バルディを家へと招き入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ