会わない愛情
質問をされたサトゥニアは、少し苦々しそうな様子だ。
確かに、言われてみると気になることではある。なぜ、両親が来てくれないのか。
単純に忙しいとかだろうか。しかし、サトゥニアの顔からすると、そうでもなさそうだ。
ーーーまさか、自分に会いたくない、とかなのか。
嫌な想像が、ペルセの頭をよぎった。もしそうだとしたら、正直、立ち直れる自信がない。
「…ペルセの両親は、『会わない』という選択をした。決して、ペルセに会いたくない、というわけではない」
「えっ…?」
会えるのに、わざわざ会わないことを選んだのか。
自分には、親の気持ちは分からない。一方で、サトゥニアの答えを聞いた、マールとハイーラは、まるで信じられないものを見ているかのように固まっていた。
「な、なん、で…?」
ハイーラは言葉がうまくつなげず、呆然としている。その様子を見たサトゥニアは、冷静に言葉を続けた。
「…本人達は、『我々が今更親を名乗る資格はない。ペルセという娘を、遠くから見守るしかできない』と言っていた」
「そんな…!!」
ーーーその言葉を、ペルセは完全には理解することができなかった。しかし、両親が自分に会うつもりがなさそうだ、ということは理解できた。
だが、答えを聞いたハイーラは、何だか哀しげな表情を浮かべている。
「…何で、お父さんとお母さんは私に会わないの?」
「ん〜…」
話がよく分からず、隣にいるマールに質問をする。それに対し、マールは少し困ったように、視線をそらす。
「…今は、そして多分これからも、君の隣に親として立つべきではない、って、思ってるんだろうね〜」
「立つべきでは、ない…?」
そんなの、自分の考えが完全に無視されている。
もし、自分が両親に会いたいと言っても、断るのか。
ーーーそれほど、自分の隣にいるのが、嫌なのか。
「ん〜…多分、君の想像とは逆だね〜」
「逆?」
「むしろ〜…好きだからこそ、下手に会ったら、逆に君を傷つける、とか思ってそうだね〜」
…マールには、何でもお見通しなのか。まるで、自分が似たような経験でもしていたかのような、変な説得力があった。
実際、マールの様子は、何だか少し寂しそうなものだった。
「…ペルセ」
急にサトゥニアから呼ばれ、ハッとする。意識が完全に、マールの方へ向いてしまってる。
ペルセは慌ててサトゥニアの方へと向き直った。
「今すぐに、両親とどうこうする決断をしろ、などとは言わない。今日は、相当に色々聞かされて、疲れたろう」
…完全に、見破られている。確かに、かなり疲れている。
サトゥニアはさらに、言葉を続けた。
「今日は帰って休め。これ以上増やせば、お前はパンクしてしまうだろう?」
「…ありがとうございます」
サトゥニアの気遣いが、ありがたかった。
ペルセは否定もせずに、素直に頭を下げた。
「アモディエナ。客人がお帰りだ」
「かしこまりました」
ずっと静観していたアモディエナが、ゆっくりと立ち上がった。
ようやく、帰れる。ペルセはそう思い、立ち上がろうとした。
「…うぁれ…?」
同時に、何だか視界が歪む。足から力が抜けていく。
意識が保てない。もう、立っていられない。そう気づいた時には、ペルセの体はすでに倒れ始めていた。
しかし、ペルセの体が地面に激突することは、なかった。
「…全く、無理しすぎだよ〜」
その声を最後に、ペルセの意識は闇に沈んだ。




