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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
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感情爆発

 口が、肩が震える。

 涙で、視界が滲んでいく。


 涙も鼻水も、止められない。

 抑えようとしても、拭き取っていっても、次々とあふれ出てしまう。


 夢の中で、オーレンに言われたことと重なるセリフ。もう、耐えられる気がしなかった。


「うっ…ふぐうぅ…!!」


 こんなところで、大声あげて泣くわけにはいかない。

 そう思っていても、嗚咽が漏れる。油断すれば、大声で泣いてしまいそうだ。


 マールが、そっとペルセの頭に手を添える。何も言わずに、頭を撫でてくれている。


 それがかえって、ペルセの抑制を外してしまう。


「えぐ…ひぐ…!!」

「…子供が、無理に我慢する必要はないよ〜」


 ーーーその一言が、最後のダメ押しだった。


 もう、制御できない。

 ペルセは、大声で泣いた。


 せめて、泣き顔を見られまいと、机に突っ伏す。しかしそれでも、その顔の下で、机も腕も涙で濡れていく。


 受け入れられた。

 認められた。


 ーーー私は、ここにいても良かったんだ。


 ずっと、思っていた。

 ダスノム育ちの自分が、否定され続けた自分が。


 その事実が、ペルセの胸に次々と、熱いものをこみ上げさせた。


 泣いても泣いても、次々に涙がこぼれる。

 声も、止めることができない。


 自分が鼻をすする音と、自分の泣き声だけが、やけに大きく響く。他は、全く聞こえてこなかった。


 マールの手が、ペルセの頭を撫で続けている。


 ーーーしばらく泣き続け、やがて声が出なくなってきた。もう、喉が限界だ。


 肩が震える。漏れ出てくるのは嗚咽だけだった。


「…そっくりだな」


 サトゥニアの、静かな独り言が聞こえてくる。その一言が、やけに気になる。


 ペルセは、一度腕で涙と鼻水を拭い、ゆっくりと顔を上げた。まだ、嗚咽が漏れてはいたが、視界は先程よりもクリアにはなった。


 サトゥニアは無言で、2枚の写真を差し出してきた。その写真には、それぞれ男女が写っている。


 鼻水をすすりながら、その写真を眺める。

 男性の方は、黒髪の短髪で、強面だった。目の前にいるサトゥニアに負けず劣らず、肩幅が広く見える。


 しかし、印象的なのは、女性の写真だった。

 そこに写っていたのは、尋問室で見たような、自分と同じ髪の色の女性だ。


 何より、その顔立ちが、自分にそっくりだ。自分が大人になったら、こうなるだろう、と思えるほどに。


「…お前の泣き方は、デメナ…母親の幼い頃に、そっくりだ。最初にお前を見た時も似てるとは思ったが…そんなところまで、似るとはな…」


 サトゥニアは静かに、しかしどこか懐かしそうに呟いた。


 自分が、母に似ている。

 マールでも、ハイーラでもなく、デメナという女性に。


「…私が、お母さんと…?」

「確かに、似てるね〜」


 写真を眺めてると、マールが口を挟んできた。

 マールは写真を手に取って、眺めている。


「…そういえば、1つ聞きたいことができたんですが」


 ハイーラが静かに、しかしサトゥニアへ目を向けた。

 サトゥニアは、何も言わずにハイーラの方へ視線を向けてくる。


 ここからさらに、何を聞こうというのか。

 これ以上、面倒な話を聞くのはさすがに辛くなってきたのに。


「ペルセ〜、そんな顔をしないの〜」


 思わず、顔に出てしまったのか。マールから再び背中を軽く叩かれた。


「…ペルセちゃんのご両親は、この場に来られないので?」


 沈黙を破り、ハイーラは重々しい口調で、サトゥニアに質問を投げかけた。

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