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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
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両親への言伝

 お父さんと、お母さんに言いたいこと。

 何かないのかと言われても、やはり分からない。


 自分にとっては、間違いなくオーレンが親だ。

 血の繋がりはないかもしれないが、そんなのは関係ない。


「…もちろん、ダスノムでの育ての親もいるよね〜。それは、多分この場にいる、誰も否定しないだろうしね〜」


 ーーーマールなりの、フォローのつもりだろうか。しかし、マールの手は、ペルセを包み込むように、背中に置かれたままだ。


 だんだんと、思考がクリアになってきた。それと同時に、何だか胸から熱いものがこみ上げてくる。


 なぜだろうか。我慢していないと、泣いてしまいそうだった。


 しかし、言いたいことが、明確になってきた。


「…頭を、上げてください」


 頭を下げ続けるサトゥニアに、声をかける。なんだか、自分の声が震えている気がする。


 サトゥニアはそう言われ、ゆっくりと頭を上げた後、ペルセを見つめてくる。その表情は、先程とそれほど変わっていない。


「お父さんと、お母さんに…1つだけ、言いたいことがあります」

「…言ってみろ」


 サトゥニアからも促される。だが、緊張しているせいか、口は上手く動いてくれなかった。

 そんなペルセの緊張をほぐすように、マールは、優しく背中をたたき続けていた。


「何言ってもいいよ〜。悪口でも、文句でもね〜」


 ーーーマールは、自分が悪口を言うとでも思ったのだろうか。何だか、調子が狂う。


 とはいえ、肩の力は抜けた。これなら、言える。


「…私、正直、お父さんとお母さんを、恨んでいません。話聞いてる限りでは、ちゃんと、一生懸命、やってくれてたようなので」

「…なん、だと」


 本心から言ってるつもりだったが、サトゥニアはかなり驚いているようだ。何なら、マールとハイーラも、動きを完全に止めている。


 ーーーしかし、もう、ペルセの口は、自分でも止められなかった。


「だから…『私を、私として産んでくれて、ありがとう』と…。それだけ、です」


 ーーー言い切った。

 何とか、こみ上げてきたものを、抑え込めた。

 だが、変な笑顔になってしまっているかもしれない。


 実際、目の前にいるサトゥニアや、隣にいるマール達は、ただ、呆然とこちらの顔を見てくるだけだった。


 しばらくの、静寂。

 自分は、変なことを言ったのだろうか。それほどに、場が固まっていることが、ペルセにも分かった。


 その静寂を破ったのは、サトゥニアだった。


「…分かった。クロニオスとデメナ…お前の両親にその言葉、責任持って私が伝えよう」


 その言葉を発したサトゥニアの声と表情は、かつてないほど重々しかった。


 何だか、胸につっかえてたものが、一気にとれたような、そんな気分だ。


 ーーーこれで、良かったのか。ペルセには、分からない。

 しかし、そこに後悔はなかった。


「…強いな、お前は」

「え…?」


 サトゥニアが不意に、呟くように言ってきた。


 それは、自分に言っているのか。こんな、非力な子供に。何かの皮肉なのか。


 しかし、サトゥニアの様子は真剣そのものだ。


「…ダスノムからここまで来るのは、並大抵の苦労ではなかったはずだ。酷い目にも遭わされたと聞いている」

「………はぁ…」


 話が見えず、間の抜けた肯定の返事しか返せない。

 だが、なぜだか、胸が、目頭が熱い。気づいた時には、目から一粒の涙が、こぼれ始めていた。


「これは、魔王としてではなく、私個人として言わせてもらう」


 涙が、止められない。

 なぜ、ここで泣いてしまっているのか。ペルセは必死に、目を拭いながら、サトゥニアの話に、耳を傾けようとしていた。


「ペルセ。…ここまで、よく、頑張った」


 その言葉が、ペルセの涙の量を、格段に増やしてしまった。

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