一致した異常魔力
「…まずは、わざわざこのサトゥニアの町まで来てくれたこと、感謝する」
サトゥニアはそう言うと、頭を下げる。
ペルセは慌てて頭を下げ返した。
ただ、来た、というより連れてこられた、に近いので、そう言われても正直、ピンとこない。
一瞬の静寂。机のわずかにきしむ音が、耳に入った。
その静寂を、アモディエナの声が破った。
「魔王様。早急に本題に入りましょう。そこまで時間的な余裕があるわけではないですよ」
「……それもそうだな。アモディエナ、例の資料は?」
「こちらに」
アモディエナはそう言うと、サトゥニアの前に、一つの蒼い球体を転がした。そして、その球から、様々な図や文字列が、空間上に現れた。
ーーー以前、バルディがやってたような技だろうか。
そんなことを考えていると、ハイーラが声をあげた。
「これって…ダスノムと、アスティアノの…?」
「あぁ。以前アモディエナの部下からも共有された、魔力災害のデータと、ダスノムの瞬間的な乱れのデータだ。これを、そこにいるペルセが起こしたと聞いてる。…間違いないな?」
サトゥニアはそこまで言い切ると、円卓に座る他の4人全員に視線を向ける。
そう言われても、ペルセには、このデータが何を意味してるのかすら分からない。しかし、周りの3人は、静かに頷いている。
ーーー本当に、自分が起こしたのか。記憶にはないが、否定はできなかった。
「…特に、アスティアノの魔力乱れは、かなり特有なものだ。恐らく、アモディエナの部下にも、この乱れのパターンが何由来のものなのか、分からなかったはずだ。そうだろう?アモディエナよ」
「えぇ…」
サトゥニアの言ってることは、理解ができない。理解できたのは、バルディにも分からなかった、ということくらいだ。
話から早々に置いていかれてしまい、ペルセは首を傾げた。
しかし、サトゥニアは構わず話を続けた。
「しかし、それも当然の話だ。ペルセ…貴様の魔力は、アスティアノ由来のものでもない。そこにいる2人とも異なるのだ」
「えっ…?」
いきなり話を振られて、思わず変な声が漏れる。
自分の力が、ハイーラ達とも違う。そう言われても、分かるわけがない。
ーーーだが、隣に座っているマールもハイーラも、納得しているような顔だ。
「やっぱり、そうですか〜。薄々、気付いてはいましたからね〜」
「これ、データで見ても、明らかに私達のものとは違いますからね…」
目の前に出されているジグザクの直線を見ながら、2人はうんうん頷いている。
ーーー何だか、仲間外れにされてしまったような、そんな感覚を覚えた。ペルセは、少し口を尖らせた。
「話は少し変わるが、このデータを見てみろ」
そう言うと、サトゥニアは手を前に差し出した。すると、その手の上に、別の図が現れる。
何だか、アモディエナが出してた図と、形が似ているように見えた。
「これ、そっくり…?」
「そうだ。調査の途中で、このデータを見た時…私もアモディエナも、腰を抜かした」
無意識に出たペルセの呟きに、サトゥニアはきちんと反応した。
たかが図が似ているだけで、そんなに驚くことがあるのだろうか。ペルセは、偶然だと思った。
「知っての通り、我々悪魔の魔力のタイプは、血…もっと言えば、血縁者に依存する。親子や兄弟であれば、発現する魔力が似るのだ」
知っての通り、と言われても、そんなの初耳だ。
ーーーそんな話、聞いたこともない。血筋が悪ければ、力もないのか。
「…それって、血だけで全て決まる、ってことですか…?」
だから、思わずそんな言葉が、口をついて出てきてしまった。
隣に座るハイーラが焦っている。しかし、それを、アモディエナが無言で首を横に振り、制している。
「…あくまで、『素質』の話だ。『実力』は、努力次第で何とでもなる。例を挙げるなら…バルディは、まさしく努力で魔力を強くしたタイプだ」
アモディエナの言葉に、ペルセは少し安心した。
頑張れば、皆バルディのようになれるのか。そう思うと、胸が軽くなったような気がした。
「…だが、鍛錬していない場合は別だ。血統が、思い切り出てしまう」
「では…この、魔力データは一体どなたの…?」
ハイーラは図を見ながら、サトゥニアへ質問を投げかけた。その質問に、サトゥニアの顔付きが強張った。
少し、躊躇をしているように見える。言えないような悪魔のデータなのか。
しかし、少しして、サトゥニアは口をゆっくりと、今までよりも重厚に開いた。
「…この魔力データは…私の側近、サトゥニアのNo.2である…『クロニオス』のものだ」




