魔王・サトゥニア8世
「…来たな、ここが、サトゥニア8世様…魔王様のおられる、玉座の間だ。失礼のないようにな」
アモディエナ達と合流すると、目の前に一際大きな、そして立派な扉があった。他の扉よりも、飾り付けが派手で、暗い中でも目立っている。
ハイーラは扉を見て、圧倒されてるようで、何も言えないようだ。ペルセも正直、何も言えなくなってしまった。
近付いてみると、圧迫感すら覚えてしまう。
「行くぞ」
アモディエナはそれだけ言うと、玉座の間の扉を、ゆっくり開ける。扉は、重々しい音をたてて、ゆっくり開いていく。
扉の隙間から、強い光が漏れてくる。
通路の暗さと差が大きく、その眩しさに思わず目を細めてしまう。
しかしそれでも、マールに引かれるままに、扉の向こう側へと踏み入れた。
次第に、ペルセの目が、部屋の明るさに慣れていく。ゆっくり、まぶたを開いていった。
中は、先程アモディエナと会った部屋よりも派手で、様々な色の石が飾られている。前に本で見た、「ほうせき」というものだろうか。
「スゴい…これが、玉座の間…」
「さすが、ゴージャスだね〜」
ハイーラとマールも、辺りを見回している。この2人でも、この空間の光景には圧倒されてるようだ。
ペルセも辺りを見回すと、空間で一際目立っているものを見つけた。
ーーー大きな円卓と、それを囲むように並べられた椅子。
そして、その奥に、一際大きな椅子があった。
その椅子だけが、ペルセ達に背を向けていた。
「魔王様。ペルセを連れてきました」
アモディエナが一歩前に出て、その大きな椅子の前に、静かに跪いた。昔読んでもらった、おとぎ話の中に出てくる登場人物のように。
ペルセがその光景に唖然としていると、椅子がゆっくりと、静かに回り始める。
思わず、息を飲んだ。あのアモディエナがあのような態度を取る相手と、これから対面する。
ーーー何だか、緊張してきた。背筋が伸び、息が浅くなる。
椅子が完全に、ペルセ達の方を向く。同時に、そこに座ってた悪魔が、姿を現した。
「待たせて済まなかったな。私が、サトゥニア8世…。この魔界を統治する、魔王だ」
その悪魔は、ペルセ達をしっかりと見つめながら、ゆっくりと、しかし厳しく低い声で言い放った。
座っていた悪魔は、アモディエナと同様、もしくはそれ以上に高そうなすーつを身に着けている。しかし、その体付きは、今まで見てきたどんな男よりも強そうに見えた。
ーーーきっちり短く整えられた黒い髪と髭が、顔を見た時に目についた。オーレンとは、まるで違う。
そして何よりーーー
「ひぅっ…!!」
本能的に、ペルセも感じ取った。
これが、頂点。歯向かうことすら許されない、圧倒的な魔力。その威圧感を、肌で感じた。
サトゥニアは、ペルセを真っ直ぐに見つめている。
その視線に敵意はないが、圧もあって落ち着けない。
「お前が、ペルセか。…その顔…なるほどな」
サトゥニアは、ペルセの顔をまじまじと見た後、静かに呟いた。
一体、何がなるほどなのか。気になったが、とてもそんなことを聞ける空気ではなかった。
「皆の者、そんなところに立ってるのも疲れるだろう。自由に座ってくれ。アモディエナ、貴様はいつもの席で良かろう?」
「問題ございません」
サトゥニアは両手を広げ、円卓を囲む椅子に座るよう、促してきた。しかし、ペルセ達の体は動かなかった。足が、言うことを聞かない。
唯一、ずっと跪いていたアモディエナだけが、その場で動いている。
アモディエナはゆっくり立ち上がり、一度ペルセ達の元へと戻ってきた。
「…座る席はどこでも良い。私が近くに座っていたほうがいいのであれば、私の近くに座るといい」
アモディエナはそれだけ言うと、慣れたように円卓の椅子に座る。その位置は、サトゥニアの左前方ーーーほとんど、向かい合う位置だった。
「うだうだしててもしょうがないし、座ろうか〜」
「…そうね」
マールの一言に、ハイーラも覚悟を決めたようで、椅子に向かって歩き出す。
ペルセも慌てて、その後を追い、椅子に座った。
ーーーペルセとサトゥニアが、ついに向かい合った。




