マールの本音
アモディエナの案内で、3人はサトゥニアとかいう悪魔のいる場所へと向かう。
その間も、ペルセの頭からは、あのデメナという女性の名前と声が、頭から離れなかった。
ーーー名前も、声も、やっぱりどこかで聞いたことがある。だが、どこだったか。
考えても、答えには辿り着かない。
「ペルセ〜?気分でも悪いの〜?」
マールが顔を覗き込んできた。その声で、ペルセはハッとした。
いつの間にか、自分の歩みが止まっている。
アモディエナとハイーラが、大分遠くへ行ってしまっていた。
「あ、ごめんなさい…。な、なんでもないから…」
「そう?それならいいけど〜…ほら、ちゃんとついてきて〜」
マールはそう言うと、ペルセの手をそっと握ってきた。やっぱり、マールの手は暖かい。
マールはその様子を見て、優しく微笑んだ。そして、ペルセの歩くペースに合わせ、ゆっくりと歩き出した。
ーーー思えば、マールはいつもそうだ。
初めて会った時も、自分がダスノムの生まれ育ちだと知っても、全く態度を変えなかった。
そして、このサトゥニアという町に来ても、ペルセに向ける態度を変えてない。
「ん〜?」
気付くと、今度はマールの顔を見つめていたようで、逆にマールがこちらに視線を向けてきた。
気まずくなり、思わず視線をそらした。
すると、頭上からマールの独り言が聞こえてきた。
「…すごいところに来ちゃったよね〜、私達」
「え…?」
一体、何を言ってるのだろう。
確かに、ペルセにしてみたら、ダスノムから大分離れたところに来てしまったのは間違いない。
「私もそうだし、君もそうだけど…。堕ちた存在が、魔界最上位の町に来れるなんてね〜」
「へ…?ま、マールさんが?」
マールに視線を向けると、ゆっくりと歩きながらも、天井を見上げている。薄暗い廊下では、その表情をはっきりと見ることはできなかった。
マールの言った言葉の意味は分からない。
しかし、その声色は、何だか楽しそうだった。
「…ありがとね、ペルセ。」
「え?」
「私がベリアスに住み始めてから、ハイーラ以外の相手とここまで仲良くできたのは、久しぶりなんだよね〜」
…なぜ自分がお礼を言われているのだろうか。マールにお礼を言いたいのは、自分の方なのに。
しかし、ペルセの口は、言葉を紡いでくれなかった。
「ちょっとマール!早く来なさい!!」
遠くから聞こえるハイーラの叫び声で、2人の空気が一気に変えられる。
せっかくいい雰囲気で、もう少し話せたのにーーー。少し、不満げに思ってしまう。
「…も〜…ハイーラったら〜…雰囲気ぶち壊しじゃ〜ん…」
どうやら、マールも同じことを思ったようだ。
しかし、いつまでもハイーラ達を待たせるわけにもいかない。
マールもそう思ったらしく、ペルセの手を軽く引っ張ってきた。
「…しょうがないね〜。行こっか、ペルセ」
「………うん」
マールは穏やかな表情をペルセに向けてきた。ペルセは、それに応えるように、静かに頷いた。
そして、先に待つハイーラの元へと歩き出したーーー。




