表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
58/68

サトゥニア幹部・デメナ

「バルディさん!!」


 思わず、声を張り上げてしまう。

 しかし、ガラスの向こう側に、ペルセの声は届かない。

 バルディは、振り上げられたアンドレイスの拳を見ているだけで、動こうとしない。


 まさか、恐怖で動けないのか。


 助けを求めるように、ペルセはアモディエナへ視線を向ける。しかし、アモディエナは静かに状況を見ているだけだ。


「アモディエナ様!バルディさんを!!」

「必要ない。もう、ヤツは『到着』している」


 ハイーラが悲痛に叫ぶも、アモディエナは全く表情を変えない。


 やつとは、誰だろうか。そう思ってると、尋問室の方から、足音が聞こえてきた。

 しかし、アンドレイスはそれにも気付かず、バルディへ拳を振り下ろした。


 しかし、その直前、アンドレイスの体が、何かに弾かれたようにのけぞった。


「ぶっ!?」


 アンドレイスがバランスを崩している。バルディがその姿を、何も言わずに見つめていた。


 ふと、バルディの後ろを見てみると、そこにはーーー


「…あれ…?」


 目に入ってきたのは、女性の長い髪の毛だった。自分とそっくりな髪の色の。

 そんなもの、それほど多くないはずなのに。


 そう思っていると、長い髪の持ち主が、静かに口を開いた。


「間に合ったみたいですね。急ぎ足で来て、正解でした〜」


 その声は、どこかマールのような、のんびりした優しさを感じる。

 ーーー聞いてて、どこか落ち着くような声色だ。


「あのお方はどなた〜?」


 マールが負けず劣らずの、のんびりした口調でアモディエナに話しかけた。


 確かに、自分も気になる。先程アモディエナが言っていた「ヤツ」とは、あの女性のことだろうか。


 アモディエナは部屋から目を離さず、ゆっくり口を開いた。


「あの者は、デメナ。このサトゥニアで、私とは違う部署の本部長をやっている女だ」

「デメナ…?」


 ーーーまただ。

 先程のクロニオスの名を聞いた時と、同じような。

 初めてのはずなのに、何だか聞き覚えがあるようなーーーそんな感覚。


 どうしても、気になってしまう。

 ペルセは、そのデメナという女性を、思わず目で追ってしまっていた。


 顔は見えないが、身長はマールと同等くらいだろうか。マールほどではないが、露出のある服を着ている。

 自分が着てるような動きにくい服装ではなく、動きやすそうな格好をしている。


「ぐっ…ぎぃぃっ…!!て、テメェ…!!」


 アンドレイスが額を抑えながら起き上がった。しかし、デメナの顔を見て、その動きが完全に止まる。


 ーーー何があったのだろうか。デメナの顔に、そんなにまずいものがついてるのか。


「…相手の顔を見てそんな反応するのは、失礼ですね〜」

「忌々しい顔だ…!!」


 のんびりした様子のデメナに、アンドレイスが再び怒りをあらわにしている。

 アンドレイスは標的をバルディからデメナに変え、そちらに詰め寄っていく。


 そして、アンドレイスは再び、拳を振り上げた。しかしーーー


「…もう、女性相手に暴力を振るうものではありませんよ」


 ーーー見えなかった。何が起きたか、分からない。

 一瞬目を離した隙に、デメナはアンドレイスの背後に回っている。そして、その手のひらには、白く揺れる「何か」が握られている。


 ーーーアンドレイスは、脱力させられたように、無言で倒れてしまった。


「…とりあえず、一時的に無力化はしておきました。この男、私の方でクロニオスさんの元にあげますよ。いいですね、アモディエナさんの配下さん?」

「…むしろ、助かります。ありがとうございます、デメナ様」


 デメナは手元にある白い「何か」を眺めながら、バルディの方に目を向けている。白い「何か」は、手の中で一定の定まらないまま存在していた。


 バルディは、デメナ相手に深々と頭を下げている。


 ーーーバルディが無事で、よかった。

 安堵と同時に、何だか力が抜けた。

 隣に座っていたハイーラも同じだったようで、大きくため息をついている。


「も〜…2人共慌てすぎだよ〜」

「何であんたは冷静なのよ…」


 この状況でずっと行動を起こさなかったマールに、ハイーラが若干の呆れを込めて返事をする。

 マールの場合は、冷静なのではなく、動くのが面倒だとか、そんなところだろうとは思うが…。


「ま〜…何にしても、よかったね〜。穏便に済んだよ〜」


 マールはのほほんとした口調で、ペルセの方に視線を向けた。先程の慰めがなければ、ペルセは恐怖でつぶされていただろう。

 マールが隣にいてくれて、心強かったのは、間違いなかった。


「それでは、私はこれにて。失礼しますね〜」

「助力いただきまして、ありがとうございます」


 デメナは気絶したアンドレイスを軽々と引きずりながら、その場を後にする。

 バルディは、その姿が見えなくなるまで、ずっと頭を下げ続けていた。


「…む?」


 ずっと状況を見守っていたアモディエナが、何かに気付いたように、自分の耳に手を当てた。


 そして、わずかな間の後、再び口を開いた。


「…サトゥニア様がお戻りになられたそうだ。玉座に向かうぞ」


 ーーーどうやら、まだ肩の力は抜けなさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ