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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
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アンドレイスの足掻き

 善行。

 ダスノムを滅ぼしたこと。

 自分達を殺そうとしたこと。

 大切な者を、奪い去ったこと。


 ーーー全て、アンドレイスにとっては、「良い事」なのか。


 そんな思いが、ペルセの中を巡る。知らないうちに、身体がこわばっていた。


「…アモディエナ様。このまま、処罰を与えますか?」


 バルディは、まるで聞く価値がないとでも言うように、アンドレイスの言葉を無視している。手元にある機械に触れながら、アモディエナに連絡を取ってるように見えた。


 ずっと静かに見ているだけだったアモディエナが、ようやく動き出す。

 バルディの持つ機械と同様の機械を、懐から取り出した。


「…いや。この案件、私の裁量でも判断が難しい。被害があまりに甚大だ」

「では…どうされますか?」


 バルディの問いに、アモディエナは一瞬、考え込んだようだ。まるで、少し躊躇ってるかのようだ。


 しかし、それもほんのわずかな間だった。


「…私のさらに上…。クロニオスの元へ、判断を仰ぐこととする。そっちに、捕縛部隊を向かわせている、少し待て」

「………分かりました」


 アモディエナの指令を受け、バルディは少し黙り込んだ後に、少し戸惑いながらも返事をした。


 ーーークロニオス。

 その名前を聞いたのは初めてのはずだ。

 ーーーなのに、なぜだが懐かしいと思った。


 しかし、その気持ちも、外からの音で無理やり遮られてしまった。


「けっ!ダスノムのゴミを庇うとは、結局テメェもゴミってことかよ!!」

「…はぁ…まだ言いますか」


 アンドレイスが心底見下したかのように言い放ってきた。バルディはもはや、相手にする気もなさそうにため息をついた。


「ここ諸共消し飛ばしてやる…!俺を不当に拘束したこと、後悔するがいい!!」


 アンドレイスは縛られたままだが、空気が張り詰めたのを感じる。


 まずい。

 あの男が、本気で魔力を出そうとしている。

 こんな距離であの男がフルパワーで暴れようものなら、いくら何でもただでは済まない。


「ちょっ、アモディエナ様!?早く、逃げないと!!」


 同じことを、ハイーラも感じたようだ。慌てて立ち上がり、アモディエナに声をかける。

 しかしーーーアモディエナは、全く動かなかった。


「必要ない。落ち着け」

「しかし…!!」

「すぐに分かる」


 ハイーラが慌ててる。

 ーーーしかし、いくら待っても、何も起こらない。


 アンドレイスも戸惑いを隠せないようで、辺りを見回している。


「…そういえば、一つ言い忘れてましたかね」

「テメェ…!!何しやがった!?」


 バルディは呆れたように、しかししっかりとアンドレイスを見据えながら、ため息をついた。

 アンドレイスは、そんなバルディを睨みつけていた。


 一体、何があるだろうか。

 そう思っていると、バルディが静かに口を開いた。


「何をしたかも何も…。ここでは例外なく、アスティアノの魔力が一定量以下しか出せないのですよ」

「何だと…!?」

「ですので、魔力戦闘は不可能です」


 ーーーバルディの説明は、相変わらずよく分からない。ただ、あの男の力が出せない、ということだけは分かった。


 アンドレイスはそこにも声を上げようとした。

 しかし、何かに気付いたようで、ふと動きを止める。そのまま、自身を縛る縄の方に視線を落としている。


「ですので、大人しくーーー」

「…そうは…いくかぁ!!」


 あろうことか、アンドレイスは力任せに縄を引きちぎった。


 何度も暴れたせいで縄が緩んでいたのか、それとも元々限界だったのか。

 どちらにしても、バルディが危ないことだけは分かる。


 縄を振り解いたアンドレイスは、目の前にいるバルディに襲いかかる。


「ちょっ…!!」

「あら〜」


 光景を目の当たりにしたハイーラとマールも、さすがに焦っている。このままではーーー。


 そう思っていても、アンドレイスの動きは止められない。アンドレイスは、近寄ってきたバルディに向け、拳を振り上げた。

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