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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
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空っぽの敵意

 ゴミ。

 ペルセが散々言われてきた言葉。

 まさか、バルディの口から、それが出てくるとは思わなかった。


「あぁそうだ!ダスノムはゴミだ!ゴミは処分されるのが、世の常よ…!」

「…だから、処分する、と?それに、命があったとしても?」

「…何言ってんだお前?」


 アンドレイスの語る内容は、やはり全くもって理解できない。それは、バルディも同じだったらしい。心底、不思議そうな表情をしている。


「ゴミに命なんて、面白い冗談だ!ダスノムにあるモノは、全て処分対象!そこにいる時点で、生きてる価値なんざねぇよ!!」


 アンドレイスは高笑いしている。

 こんな考えを、なぜあんなに笑いながらできるのか。こんなふざけた考えで、オーレンは殺されたのか。


 ーーーもはや、怒りすらも湧いてこなかった。


「あそこには、生きている悪魔達もいたはずです。それらも全て、無価値だと?」

「…無価値なんて生温い…!もはや、害しかねぇだろうが!!あそこにいたってだけで、ベリアスでもアスティアノでも、害しか与えねぇよ!!」


 バルディは、それでも顔色も声色も全く変えていない。ずっと、淡々としている。


 ふと、アモディエナの方へ視線を向けてみる。アモディエナも、特に何も言葉を発することなく、ただ見ているだけだった。


「俺が犯罪者だとか言うつもりならなぁ…!あの、ダスノムの存在こそ罪なんだよ!!」


 アンドレイスは、これまでになく熱のこもった叫びをあげた。


 ダスノムの存在が、罪…?自分は、生きているのが罪だと、あの男はそう言いたいのか。


 バルディもアモディエナも、その発言に対し、何も反応していない。しかし、バルディの纏う空気が、確実に変わっている。

 アンドレイスはそれに対し、鼻で笑った。


「それが、この魔界の常識だ。分かったらとっとと俺を解放しろ。そして、ダスノムを消す手伝いをしろ」

「…お断りします」 


 バルディは、アンドレイスの要求を、冷たく、しかしハッキリと拒絶した。


 しばらくの、沈黙が流れる。誰も、何も言わない。


 しかし、アンドレイスの肩が、大きく震えているのが分かる。


「話聞いてたかぁ!?俺の行為は正しいんだ!!どこに要求を断る理由がある!?」

「…言わないと、分かりませんか?…だとするなら、私はアナタを買い被っていたようだ」


 何だか、不穏な空気だ。これ以上は、止めたほうがいいのではないのか。

 再び、アモディエナの方へ視線を向ける。しかし、これを見ても、アモディエナは動く様子がない。


 アンドレイスは、拘束がなければ今にも飛びかからん勢いだ。しかし、バルディはそれでも動じていない。


 このままだと、ここで2人が大喧嘩してしまうのではないか。ペルセは、オロオロしながらその光景を見続けていた。


「ならアレか!!テメェは害しかねぇものを丁寧に守ろうってのか!?」

「罪人は裁くのみです。しかしながら…ダスノムの者達が、アナタに何かしたのですか?なぜ、そこまで敵意を向けるのです?」

「あぁ!?」


 バルディはあえて、アンドレイスから視線を外した。アンドレイスは椅子をガタガタさせながら、体を大きく揺らしている。ペルセには、子供が駄々をこねているように見えた。


 これが本当に、自分の大切なものを奪った男なのか。

 子供の自分よりも、子供に見えてしまう。


 バルディの問に対し、アンドレイスはゆっくりと口を開いた。


「…何も、されてねぇよ。だが…」


 そこまで言って、アンドレイスは、ペルセ達のいる方を見てきた。

 向こうから自分の姿は見えてはいないはずなのだが、何だか背筋が伸びてしまう。


 しかし、それも一瞬だった。すぐに、アンドレイスは視線をバルディに戻した。


「…俺がやってるのは、魔界の大掃除という、『善行』なんだよ…!!」


 イラつきを隠すことなく、アンドレイスはバルディを睨みつけながら、はっきりと答えた。

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