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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
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明らかなる上下

 アンドレイスとバルディが、何も言わずに向かい合っている。

 しかし、その関係は、対等には見えない。


 直立しているバルディが、椅子に縛られているアンドレイスを見下ろしている。かつて自分を見下していたその男を、ペルセ自身がさらに見下ろしている。


 ーーー何だか不思議な感覚だった。


「さて、それでは尋問を開始します。記録も行っていますので、迂闊な言動はお控えいただくようーーー」

「黙れ!!テメェは何者だ!!ここはどこだ!!」


 冷静に書類を読み上げているバルディに、アンドレイスが食ってかかる。わずかに見えるその表情は、明らかな怒りだった。


「…本当に、エゴイストよね…」

「自分が何か悪いことをしたって心当たり、何一つないんだろうね〜…」


 隣にいるハイーラとマールが、呆れたように呟いている。しかし、尋問室にいるアンドレイスは、その言葉に全く反応していない。


 ーーー本当に、声も聞こえていないようだ。


 すごい技術があるものだ。こちらから見た感じだと、普通のガラスにしか見えないのに。


 ペルセが感心していると、バルディが再び口を開いた。


「…言葉を慎んでください。アナタは重要参考人として、ここに連れてきています。話を聞いたうえで何もなければ、すぐに解放しますよ」

「拘束を解け!!俺が何をしたと言うんだ!!」

「…初対面の私に襲いかかってきたような者の拘束を解くなど、するわけないでしょう…」


 アンドレイスはバルディにも襲いかかっていたのか。あの男、ダスノムを見下しているだけではなかったのか。ペルセには、あの男が分からなくなってきていた。


 実際、バルディも呆れたような声色だ。だが、アンドレイスはそれに気づいていないようだった。


「あなたを連れてきたのは、先日アスティアノにて発生した魔力災害について、その場に居合わせたという確証があったからですよ」

「…ッ…!!あの時言ってた一件かよ…!!」


 バルディの説明に、アンドレイスは少し冷静さを取り戻したようで、声色が少し落ち着いた。しかし、イラつきは隠せないようで、貧乏ゆすりは止まらなかった。


「…少し、落ち着きましたか?」

「何が聞きたいってんだ…!!」


 バルディの問いかけは穏やかだったが、アンドレイスはそれにすら敵意を見せている。

 普通に答えることはできないのか。子どもの自分でさえ、できたことなのに。


「…当事者達の証言で、アナタがあの場にいて、かつ暴れたことは分かっています。…なぜ、あの場でそのようなことをしたのですか?」

「ダスノムのゴミがあったからだよ!!処分しようとして何が悪いんだ!?」


 バルディの問に対し、アンドレイスは声を荒げた。いきなりの怒声に、ペルセは肩を震わせる。


 怖い。


 あの時の、襲ってきたアンドレイスの表情が、声色が、頭によぎった。


 怖い。

 あの時と、何も変わってない。


 震えていると、ペルセの肩にそっと、優しく手が置かれた。見てみると、マールの腕が伸びてきていた。


「…大丈夫。………大丈夫だよ〜」


 マールはそう言いながら、優しく肩を叩いてくる。

 視線は、こちらには向いていない。


 ーーーにも関わらず、恐怖がかなり和らいできた気がする。


 気付けば、ペルセの肩の震えが、止まっていた。

 これで、ちゃんと目の前の光景に向き合える気がした。


「…あんたって…ホント、ズルいわよね…そういうとこが」

「ん〜?ふふふ…」


 ハイーラが何だか、少し口を尖らせている。珍しい表情だ。

 マールもそれに対し、何も答えず、ただ楽しそうに笑ってごまかすだけだった。


 ズルいとは、いったい何なのか。どこにそんな要素があるのか。なんとなく、気になった。


 その時だった。


「…ゴミ、ですか」


 バルディの低く、冷たい一言が、ペルセの視線を尋問室へと戻した。

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