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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
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ペルセの重き決断

「…ペルセ」


 アモディエナは、真っ直ぐにペルセを見つめていた。マールでもハイーラでもなく、ただの子供であるペルセを。


 その目つきは、変わらず険しい。その視線に、思わず背筋が伸びてしまう。


「…我々は、罪人を裁く側だ。君は、アンドレイスという男に、どうなって欲しい?」

「どう…って…?」


 ーーー何を言い出すのか。

 そんなこと、考えたこともなかった。


「アンドレイスのしたことは、到底許されることではない。君の故郷を、大切な悪魔を奪い、君をも殺そうとしたのだ。罰を与えないわけにも、いかないのでな」

「…罰…?」


 アモディエナは言葉を続けたが、ペルセにはよく分からない。

 だがーーーペルセのされてきたことを、アモディエナがちゃんと分かってくれてることだけは、理解できた。


「…アモディエナ様…。その問いは、些か酷なのでは…?」


 横に影のように立っていたバルディが、口を挟んできた。少し眉を下げており、心配そうな表情だ。


「そんなことは、百も承知だ。…だが…それでも聞かねば…私の気も、収まらぬ」


 しかし、アモディエナは、バルディの方へ視線を移さなかった。ずっと、表情を変えず、ペルセの方を見ている。


 この問いからは、逃れられない。ペルセは直感的に、そう感じ取った。


「…悪いことをしたアンドレイスには、お仕置きをせねばならないのだ。ペルセは、アンドレイスに対して、どう思ってる?」

「どう…か…」


 アモディエナの問いに対して、ペルセは考え込んだ。


 アンドレイスに対して、どう思うかなど…。

 あの、オーレンを、自分の場所を、理不尽に奪ってきた、あの男へ。


 そんなの、当然ーーー


「…アイツを、許せないって、思ってます。何も、なしというのは、納得、できない、です…」


 ペルセは必死に、言葉を紡いだ。その最中、頬に生暖かい感触を感じた。


 ーーーいつの間にか、涙がこぼれ落ちていた。


「ちょっ、ペルセちゃん!?」

「ありゃ〜」


 両隣に座っているハイーラとマールが、何だか慌てている。

 ハイーラは慌てて胸元からハンカチを取り出し、ペルセの頬を拭ってきた。一方のマールは、ただただペルセの頭を優しく撫でている。


 アモディエナは、そんな3人のバタバタを、正面から静かに見つめてくるだけだった。


「…アモディエナ様」

「うむ…」


 アモディエナの横から、バルディが改まって声をかけてきた。アモディエナはそれに対し、何かを決めたかのように、静かに小さく頷いた。


「ペルセ」

「はい…?」


 アモディエナは再び、ペルセに声をかける。その声には、先程のような圧は感じられず、どこか柔らかさが交じっていた。


 ペルセは、ハイーラに顔を拭かれながらも、アモディエナの方へ視線を向ける。アモディエナの表情も、先程のように眉を寄せていなかった。


 アモディエナはペルセに向けて、ゆっくりと頭を下げた。


「…よく、話してくれた。辛いことを思い出させて、済まなかった」

「へっ…?い、いえ…」


 何が起きているのか、理解が追いつかなかった。 

 あのバルディの上司が、頭を下げているーーーあまりの事態に、ペルセも目の前の光景が飲み込めずにいた。ハイーラやマールも同様だったようで、呆然としている。


「あの者への仕置きは、望む通りに行うと約束しよう。希望するなら、同席も可とするが…」

「…同席?」


 同席、とはどういうことか。なぜだか、そこが妙に引っかかる。

 アンドレイスという男と、再び会おうと思えば会うこともできるのか。


 ーーー何で自分を襲ってきたのか、安全な状況で聞いてみることもできるのか。


 なぜそのように考えたのか、ペルセにも分からない。


 無論、怖くないわけではない。しかしそれでも、本人から聞いてみたい、という気持ちも、捨てられなかった。


「…ペルセ、ちゃん…?同席なんて、やめたほうが…」

「ハイーラ〜」


 ハイーラがオタオタしながらペルセに視線を向けるが、マールはそれに対し、小さく首を横に振る。


 ハイーラはそれでも不安そうに、ペルセを見つめ続けた。


「…同席、したいのか?無理にとは言わないが」

「…………して、みたいです」


 アモディエナからの確認に対し、ペルセは躊躇いつつ返答した。


 ーーーこの判断が、正しいのかは分からない。


 しかし、ペルセはそれでも選んだ。アンドレイスの話を、聞いてみることを。


 アモディエナはペルセの言葉を受け、その答えを受け止めたかのように、無言で頷いた。

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