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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
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上に漏れる、アンドレイスの狂気思考

 例の案件、とは何のことか。

 バルディが小さい声で静かに話していた内容が、やけに耳に残る。


 ハイーラやマールも同じだったようで、冷や汗をたらしつつ、ゆっくりとバルディ達の方へと目を向けていた。


「ふむ…いいだろう。ちょうど、当事者も揃っている。資料はあるか?」

「こちらに」


 アモディエナが頷き、バルディに視線を向けた。バルディは動じることなく、手元に何枚かの紙をいきなり出現させた。


 どこから持ってきたのか。先程まで、手ぶらだったはずなのに。何度か似たような光景を見てきたが、やはり分からない。


 アモディエナはその紙を受け取り、ペルセ達の前に差し出した。

 相変わらず、何も読めない。しかし、以前と違い、ハッキリ認識できるものもあった。見覚えのある姿に、思わず視線が止まる。


「…これ、アンドレイス…?」


 思わず、ペルセの口から言葉が漏れる。

 紙の中に、アンドレイスの写真が載っている。しかし、アスティアノで会った時のような、自分を見下した表情でも、すーつに身を包んだ格好でもない。


 不満そうな表情で、ボロボロの使い古された服を着ている。


 どこか拗ねてるような、そんな表情に見えた。


 ーーー一体、何があったのか。


 そう思っていると、バルディが口を開いた。


「先日、初めて貴方がたの元に伺ったその日のうちに偶然、かの者、アンドレイスと接触しましてね」

「え…その日の、うちに…?」


 バルディの説明に対し、ハイーラが声をあげた。若干、落ち着いてきたのか、途切れ途切れながらも、言葉を紡ぐことはできていた。


 そんな偶然があるのか。ハイーラがそう言いたげだったが、一瞬ペルセに視線を向け、押し黙った。


「…貴方がたの、言っていた通りの思考でしたよ。徹底的に、ダスノムから来ているペルセを、抹殺しようとしていましたから」

「…それで、捕らえたってこと〜?」

「はい。私にも襲いかかってきましたから、制圧して無力化しました」


 バルディが淡々と説明している。マールも顔色がよくなってきており、段々普段の様子に近付いていた。実際、バルディへの返答も、いつものような間延びした口調に戻っていた。


「…私も、捕縛後にかの者には会ったし、直接話も聞いた」


 アモディエナが机の上の資料から視線を外さないまま、ゆっくりと口を開く。その険しい声色に、自然と視線が引き寄せられる。


 少し間を開け、アモディエナは視線をペルセ達に向けてきた。


「…アレほどの偏った選民思想、ダスノムを見下したような考え方は…少数派だとは思いたいが…。実際は、どうなのだ?報告によると、さして珍しくはないようだが…」


 その質問に、ハイーラとマールは顔を見合わせている。ペルセも、以前バルディに似たようなことを聞かれた記憶がよみがえった。


「バルディからの報告も受けたが、私としても信じ難い。アスティアノの、現場での一意見も聞きたいのだ」


 アモディエナは真っ直ぐに三人を見つめる。

 マールもハイーラも、しばし言いにくそうにしていたが、アモディエナの圧には勝てなかったようで、ゆっくりと口を開いた。


「…アンドレイスみたいに極端なのは、確かにレア物ですね〜」

「けど…考え方として、ダスノムにいる者がゴミだ、ということそのものは、然程珍しくありません」


 何とか、言葉を選びつつ、2人は答えた。その言葉を、アモディエナは表情を変えることなく、最後まで静かに聞いている。


 沈黙。マールとハイーラ、そしてアモディエナがそれぞれ向き合っている。険しい沈黙だ。


 アモディエナの眉間に、大きくしわが寄った。

 その様子に、マールとハイーラが体をこわばらせている。


「…なるほど。それならば、あの者の態度にも…納得だ」


 しかし、アモディエナの声色には、怒りがなかった。ただ、先程までの穏やかさもない。何だか、得体の知れない冷たさを感じる。


 アモディエナはそのまま、静かにペルセへ視線を向けてきた。

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