表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第三章 最上位の町・サトゥニア
51/64

アモディエナのもてなし

 思わず、背筋が伸びる。穏やかではあるが、どこか威圧感のある声色だ。


「お招きいただき、ありがとうございます。…アモディエナ様」


 バルディは軽く、頭を下げた。それと同時に、椅子が静かに回転し、そこに座っている悪魔の姿が見えた。


 細い。あのアンドレイスとかいう男よりも、線が細い印象だ。しかし、その目つきや表情には、険しさが見える。そして、顔にはバルディと同じ、目元を覆うような枠がつけられている。

 そして、バルディと同じような、『すーつ』も着ている。バルディ達のところだと、目元の枠とすーつは、必ず皆身につけるものなのだろうか。


「客人よ。わざわざサトゥニアまでご足労いただき、感謝する。私は、サトゥニア諜報部本部長を務める、アモディエナという者だ。分かりやすく言えば、そこのバルディの上司だな」


 アモディエナはそう言いながら、ペルセ、マール、ハイーラの順に視線を送った。マールとハイーラはアモディエナを見て固まっているようだったが、ペルセだけは違った。


 ーーーこの悪魔、どこかで見たことある気がする。


 あり得ないはずなのに、そんな感覚が生まれた。ここに来たことも、ましてや過ごしたこともないのに。なぜか、その感覚がハッキリとあった。


「…ペルセ、という者は、そこの小さい、桃色の髪の少女で良いのだな?バルディよ」

「はい。それで間違いないです」


 アモディエナは確認するかのように、バルディの方を見た。バルディはそれに対し、深々と頷いている。

 やはり、バルディでも上司には勝てないのだろう。


 というか、まだ自己紹介していないのに、なぜ名前が知られてるのか。なぜ、自分がペルセだと分かったのか。


「…なるほど。報告通りの、幼き子供だな。それにしても…」


 アモディエナはそう言いながら、ペルセを見つめる。何だか、バルディと初めて会った時のような、観察してるような視線だ。

 見るのは別にいいのだが、どういうつもりなのだろうか。


「…いや、止めておこう。まだ、その時ではない」


 そう言いながら、アモディエナはゆっくりとペルセから視線を外し、俯いた。

 ーーー一体、何だというのか。何か思ったのかもしれないが、ペルセには分からなかった。


「…それで、サトゥニア8世様はどちらに?」

「あいにく、今魔王様は別件で席を外されている。少し時間がかかりそうな案件でね」


 ーーーせっかく来たというのに、自分達を呼び付けた本人はいないのか。何だか、不公平だ。

 ハイーラ達も同じように考えてるだろう。そう思い、ハイーラ達の方へ視線を向けた。


 しかし、2人共完全に雰囲気に飲まれて、未だに緊張している。あまり、役には立たなさそうだ。


「…少し、待ってもらうことになる。ゆっくりしてくれたまえ」


 アモディエナはそう言いながら手を叩いた。すると、机を挟んでアモディエナと向かい合せになるように、アモディエナが座ってる椅子と同じような椅子が3つ、その場にいきなり現れた。


 よくよく見てみると、机の上に、お菓子とジュースも置いてある。先ほどまで何も置いてなかったのに。


「し、シツレイシマス…」


 しばらく固まっていたハイーラ達が、まるで年季の入った人形のような、カチカチの動きで椅子に座った。

 ペルセも、それを不審そうに見ながら、あとに続いて椅子に腰かけた。


 ーーー見た目によらず、ふかふかだ。座り心地が良い。

 この椅子で、そのまま寝てしまうことができそうだ。


 しかし、その眠気も、目の前に置かれてるお菓子の甘い匂いで吹き飛んでしまう。なんだか、普段ハイーラが用意してくれるお菓子とは違った、鼻に残るような匂いだ。


 アスティアノでも、ハイーラが「高くて買えない」と言っていたお菓子に似ている。こんな、高そうなお菓子を食べて良いのかどうか、ペルセはそれだけを考えていた。


「こ、これって…!?」

「ハイブランドの、超高級お菓子だね〜…」

「ジュースは、普通のやつなのに…」


 ハイーラとマールも、目の前の光景を見て冷や汗をかいている。やはり、高いお菓子のようだ。


 ーーー何だか、ハイーラ達の慌てっぷりが、どこか面白く感じ始めていた。ペルセは、そんなハイーラ達を、ジュースを躊躇いなく飲みながら眺めていた。


「遠慮する必要はない。今回、私が呼びつけた側なのだ。サトゥニア8世様が戻られるまで、ゆっくりしていてくれたまえ」

「アモディエナ様…この状況でゆっくりと、というのは…さすがに、無理かと」


 アモディエナの言葉に対し、隣にいるバルディが、若干呆れたように声をかける。


 アモディエナは気遣うつもりで優しく言ったつもりのようだが、ハイーラ達は言葉を発することもできず、余計に固まってしまった。

 実際、バルディでさえも、完全にリラックスはしていない。何なら、バルディは座ることさえせず、アモディエナの隣に姿勢よく立っているだけだ。


「むむ…そういうものか…。貴様以外のアスティアノの悪魔と接したことが少ないからか…勝手が、分からぬ」


 バルディもアモディエナに声がけをしたようだが、アモディエナはいまいち分かっていないようだ。不思議そうに、眉をひそめている。


「…ところで、アモディエナ様。時間があるなら、例の案件、先に処理しませんか?」


 バルディは軽くアモディエナの方に顔を寄せ、声を潜めるように語りかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ