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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二章 上位の町・アスティアノ
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初体験の、窮屈な格好

「…はい」


 ハイーラは手を止め、玄関へ向かう。

 隣にいるマールも、玄関の方へ目を向けている。


 扉の先には、そこには2つの黒い布のようなものを持ったバルディが立っていた。


「お待たせしました。大人用と子供用のスーツ、各一着、お持ちしました」


 もう、来たのか。そう思い、時計を見てみた。

 まだ、アレから10分も経っていない。


 それなのに、バルディに疲れた様子は全く無い。一体、この短時間で何をしていたのか。


 ペルセがそんなことを考えてるうちに、ハイーラがその黒い布をペルセの前で広げていた。ーーーどうやら服のようだが、普段着てるものとは何か違う。


「準備が完了しましたら、お声がけください」


 バルディはそう言うと、軽く頭を下げ、扉を閉めた。


 準備と言われても、一体何をするのか。ペルセは、目の前でハイーラがしている作業を眺めるしかなかった。


「マール。あんたは自分でできるでしょ。この子のスーツのサイズ調節は私がやっとくから」

「分かってるよ〜。ちょっと部屋借りるね〜」


 ハイーラは一切顔を向けることなく、マールに向けて言う。マールも、それを特に気にする様子もなく、部屋の奥へと消えた。


 ハイーラは目の前に、バルディから受け取った黒い服を広げた。そして、先程何かを記録していた紙を見ながら、紫色の何かで服を覆っている。


「…それ、何してんの?」

「スーツの…あぁ、この服のサイズ調節。さっき、アナタの体の色んなとこを測らせてもらったから、それに合わせてる」


 確かに、言われてみると、服の袖の長さやスカートの丈の長さなんかが変わってる気がする。

 どうやって変わっているのか。それは、見てても分からなかった。


「…もしかして、マールさんも、それを自分でやる、ってこと?」

「そうよ。まぁ、アイツのことだから、私みたいにちゃんと測らないと思うけどね」


 そういえば以前、マールと始めて会った時、マールはいきなり自分のサイズに妙に合ってる服を出してきた。もしかして、裏でこういう作業をしていたのか。しかし、マールはハイーラのような、事前に数字の記録などは確かにやってなかった。


「…よし、できた」


 そうこうしてるうちに、ハイーラは紫色の膜を黒い服の周りから消した。服の見た目は先ほどと変わらないが、大きさが少し変わったような気がする。


「じゃあペルセ、悪いけどこれに着替えてちょうだい」

「え、私が着るの?ハイーラさんは?」

「私は自前のを着るわ」


 ハイーラはそう言い残し、自分の寝室へと向かった。


 こんな服、着たことがない。触れてみた感触も、今までの服とは違っている。しかし、何となくどこに腕を通せばよいのかは、アスティアノで過ごすうちに、大分分かるようになってきた。


「んしょ…」


 元々着ていたワンピースを脱ぎ、黒い布に袖を通す。何だか、変な感触の服だ。しかし、ハイーラの調整の結果なのか、サイズは合っている。


「ペルセ〜、それ違うよ〜」


 後ろからマールの間延びした声が聞こえてきた。振り返ってみると、いつもの肩を露出した服装ではなく、先程バルディが持ってきた黒い服に身を包んでいる。


 ーーー何だか、バルディと似たような、少し近寄り難い、硬い雰囲気を感じた。


「こっちの白いのが先〜。ハイーラもちゃんと最後まで教えてあげてよね〜…」


 マールはそう言うと、ペルセが間違えて着ていた黒い服を、慣れてるかのように脱がした。


 順番があるのか。確かにマールを見ると、白い服を中に着ている。これが正しい順なのか。


 ペルセはそんなことを考えながら、白い布に腕を通した。先程の黒い布とは、少し違う感触だ。


「ん〜…」

「上から羽織る前に、スカートも履いちゃおうか〜。シャツの裾が出てたら、だらしがないし〜」


 マールはそう言うと、スカートを差し出してきた。

 何だか、いつも着てるスカートと違う。全く、ヒラヒラしていなくて、動きにくそうだ。


 ペルセは言われるままにスカートを履き、シャツを中に入れた。何だか、少し窮屈だ。そして、やっぱり動きにくい。


「あ、マールごめんね。着替え方教えてたの?」

「ちゃんと教えてから離席しなよ〜?」


 ペルセが最後に残った黒い布を羽織ってると、マールと似たような雰囲気の格好になったハイーラが戻ってきた。


 こんな動きにくい服を、なぜ2人共着たのだろうか。ただでさえ窮屈なのに、黒い布を羽織ると、その窮屈感が増した。


 ペルセには、この格好をする必要性が、全く理解できなかった。


「準備、いいわね?バルディさん呼ぶわよ」


 ハイーラはペルセの格好を一通り確認し、軽く埃を払うと、マールの方を向いた。

 マールは、無言で頷いた。


「あ、バルディさん。準備できました」

「…思ったよりも、早かったですね」


 ハイーラは扉を開け、バルディを呼んだ。

 扉の先にいたバルディは、家の前の柱に寄りかかり、本を読んでいたようだった。

 ペルセの位置からでは、何の本かは見えない。しかし、スゴく厚く、少し古そうな本なのは分かった。


 バルディは本に何かを挟み、片手でゆっくりと閉じた。そして、バルディが本に視線を向けると、本は一瞬にしてその場から消えた。


 何をしたのだろうか。それが分からずにいると、バルディは声をかけてきた。

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