学会終了
「いや〜…疲れたばい」
「お疲れ様でした」
学会が無事に終了し、エルフィーとラウラは互いを舞台裏で労い合っていた。ただでさえ堅苦しいオフィシャルな場であるため、慣れないスーツに身を包んでまで来たのだ。
エルフィーは肩が凝った、とでも言わんばかりに、思い切り腕を回していた。
「それにしても…ラウラ先生、あんな仮説ば持っとったったいね。何だかんだ、感情論には否定的やったのに」
「やっぱり、ボクらが仲良しだってことは、ランちゃんも分かってるんだね!」
エルフィーが少しからかうように言うと、近くにあった窓ガラスの反射面に写ったヴァーレアが、嬉しそうに笑っていた。
ーーーやっぱり、ヴァーレアがあんな発表に反応しないわけがなかった。さすがに壇上では我慢したようだが、学会も終わった舞台裏で思い切り喜びを爆発させてるようだ。
そんなヴァーレアと対照的に、ラウラはこめかみを押さえていた。
「…内容の発表については、あなたとも散々議論したでしょう。初耳の内容でもないはずですが」
「そりゃそうだけど、それを公衆の面前で認定されるのは、やっぱ違ってくるよ!」
「はぁ…こうなるからあまり扱いたくはなかったんです…」
窓ガラスの中で大はしゃぎするヴァーレアを見て、ラウラは頭痛がしているようだ。だが、ウザったそうな態度を取っていても、口元はほんの少し緩んでいる。
ーーーわずかな、ラウラの表情の変化。数百年間共に付き合ってきたエルフィーでなければ気付かないほど、微細な変化だった。
「ばってん…ラウラ先生とヴァーレア先生、ホントに仲良かもんね。ウチでも太刀打ちできんばい」
「…まぁ…肉体まで共有してますから、ある意味もう一人の自分のような存在ですよ」
「そんで気付けば数百年やろ?…契約ってすごいんやなぁ…」
エルフィーがしみじみと言うと、ラウラはヴァーレアの方を見る。何だか、いつもの眠そうな目付きの中に、どこか物憂げさが入った目だった。
「…エロイム・エッサイムの契約…私達が結んだ契約は、本当に相手にその身を捧げる、という旨の強力な契約ですしね」
「契約結んだときは必死だったからねー」
「…まぁ、騙し討ちで契約されたようなものですが、思いの外役立ちますし、特に解消する理由もないのでそのままにしてるだけですけどね」
「ボクはモノじゃないよ!?…って言いたいけど、それがランちゃん語録だからね、ちゃーんと分かってるよ」
二人の下らない言い合い。もう何百回、何千回と見せられてきたやり取りだ。だが、その言い合いの中に腐れ縁で、強い信頼があるのはもはや、いちいち確認するまでもない。
ほっといても問題はなさそうだ。
「え、エルフィー先生!!」
そう思っていると、先程まで壇上に立っていた研究者達が、エルフィーに声をかけてきた。
何の用だろうか。一気に殺到されても、見上げるだけで首が痛くなって困る。エルフィーは視線だけ、研究者達の顔へ向けた。
「…何ね?」
「妹さんについてお聞きしたいんですけど…!!」
ーーー今度は、エルフィーを頭を抱える番だった。先程のラウラと同じく、自身のこめかみを押さえた。




