温かい…!ー初めてのシャワーー
…一体、何がどうなっているのか?
店の奥に連れていかれたかと思えば、服をひっぺがえされ、気づいたときには、謎の湯気がもうもうと立ち込める部屋へ押し込まれた。
「一回そこのシャワーブースで体を洗え!!話はそれからだ!!」と言われたが、どうすればよいのか分からない。
謎の物体、謎の設備。そんなものをいきなり提示されても、どう操作して使えばよいのかも分からない。
「あの…どうやって使うのコレ?」
「は!?」
だから、この質問が出てくるのは必然だと思っていたのだが。---相手の反応はまるで違った。
「おい、マジかよ…シャワーの使い方が分からないって…」
「いやでも、今の感じだと、もっとヤバそうよ…?」
扉の向こうで、ひそひそ話が聞こえる。
そんなことを言われても、分からないものは分からない。少なくとも、ダスノムでこんなものを見かけたことはない。
だからと言って、裸で外に出られるほど図太さもない。
一体どうしたものだろうか---。
「あ~もう!さいっあく!!」
文句を言いながら、顔の下半分を完全にタオルで覆い、手袋までつけた状態の女が入ってきた。その顔は、目つきだけでも明らかに嫌そうなのが見て取れる。
「あんたシャワーの使い方も知らない、ってどういうことよ!?」
「いや、見たことないし…」
「あーもう!!鼻が曲がる!!使い方教えるから、見てなさい!!」
いくら怒られても文句を言われても、知らないものは知らない。入ってきた女は、蛇口をひねってお湯を出させていた。蛇口そのものはダスノムでも見たことあったが、アレはこんな使い方をするのか---。
「ほら、もういけるでしょ!とっとと洗いなさい!!」
そんなどうでもいいことを考えていると、女は脱兎のごとく部屋を出てしまった。
…嵐のような一瞬だった。結局、なんであんな嫌そうだったのか。全く、心当たりがない。
ただ、とりあえずここの使い方は分かったので、シャワーとやらを浴びるとしよう。
そう思い、先程教わった通りに、蛇口をひねった。すると、頭上からお湯が降り注いだ。
---温かい。
素直に、そう思った。
今まで、川で体を清めたことはある。しかし、当然川の水はこんな心地よい温かさではなく、もっと中途半端なぬるさだった。
一体、どういう仕組みになっているのか。可能であれば覗いてみたいが、今はこの場を借りている立場だ。さすがに我慢せざるを得ない。
「着替え、ここに置いておくぞ」
「へ?あ、はーい」
部屋の外から、自分をここに引っ張ってきた男の声が聞こえてきた。着替え…そういえば、自分が着てきたあの服は、どうするんだろうか。ここに連れてこられたときに、半ば強引に脱がされたが。
そう思いつつ、ふと視界を足元に向けると、頭上から降り注ぐお湯が、髪をつたって床へ落ちていく様子が見えた。しかし、元々の透明なお湯の色ではなく、ダスノムの川の水のような、濁った色であった。
「…うーわ、濁ってるなぁ…」
さすがに、それが「汚い」ということは、ペルセにも分かった。よくよく床を見渡すと、自分の体からしたたり落ちている水が、軒並み濁っていることに気づいた。
---自分の体は、こんなに汚れていたのか---。
温かいお湯を浴びる心地よさを味わいつつ、したたり落ちる水が、元の無色透明なものになるまで、ペルセはシャワーを使い続けた。




