ラウラ、発表開始
「さて、次は私ですね」
エルフィーの後ろにスタンバイしていたラウラが、ゆっくり立ち上がる。すると、壇上から降りてきたエルフィーと目が合った。
「お疲れ様でした、エルフィー先生。素晴らしい発表でした」
「次はラウラ先生やね。頑張ってくれんね。エルフェンの相手もよろしく!」
「…頑張ります」
ラウラとて、エルフェンの厳しさは元々知っていた。教育者として、研究者として尊敬するほどの、あの厳しさを。そして、姉をも一流の研究者として鍛え上げた、その専門的な査読眼も。
だが今回、それを改めて目の当たりにし、自然と背筋が伸びていた。
若干緊張もありつつ、ラウラは壇上へと登った。
「それでは続けて、ラウラ先生による発表です。題目は、『人魔混合魔力の異常形質と、その要因に関する仮説』です。エストラ所属のラウラ先生とヴァーレア先生、そしてエルフィー先生による共同研究になります。それでは、お願いします」
司会者からの紹介を受け、ラウラはマイクの角度を調節した後、ゆっくりと口を開いた。
「私が発表するのは、以前から私がエストラでエルフィー先生達と研究を続けている、私とヴァーレアの混合魔力の形質についてです」
その言葉に、研究者達が前のめりになる。
つい、数ヶ月前。ソロモニアという組織が、ドゥローラという国が、悪魔を隷属させて支配し、その魔力を一方的に搾り取るようにして使役していたことが明らかになったばかりなのだ。
ラウラの研究を昔から知っている者ならいざ知らず、若い研究者だと動揺するだろう。
「大前提として、同種族でも異種族間でも、魔力を混ぜ合わせることは可能です。ですが、通常の混合魔力では、双方の魔力形質が残ったままで混ざることが一般的で、混合はしてても双方の魔力領域の区別はつきます」
ラウラは資料を切り替えつつ、淡々と発表を続ける。この事実そのものは、研究者でなくとも、エストラの高校生以上の学生であれば知っている事実だ。
実験手順の説明では、特に目立つ反応はなかった。だが、実験結果を示す資料に切り替えると、一気に研究者の視線に熱が入った。
「実験を重ねた結果、私達の混合魔力では、その境界すらも曖昧で区別不可です。あと、特に注目すべき点として、異種族間で魔力を混ぜ合わせる場合に生じる拒否反応率も、0.01%を切るほどに極端に低い状態を示しています」
何度見ても、衝撃的だ。一般的には低くても二十%程度出ると言われる数値で、これほど低い値が出るのは、もはや異常値だ。ラウラは資料の中で、五回分の測定データを示した上で平均化していた。
それゆえ、単発のデータとは見られないだろう。
「この際の測定条件については、ここで詳細には話しませんが、レジュメにて一覧表でまとめてあります。各自ご覧ください」
ラウラは手元に置いた自身のレジュメを一瞥する。
異常現象の測定なのだから、測定条件はかなり念入りにした。ましてやエルフィーとの共同研究なのだから、手を抜くことはできなかった。
「そして、こうなった要因として、私は二つの仮説を考えました」
ラウラはそう言うと、資料のスライドを切り替えた。その表題には、『仮説① 契約術式による魔力混合障壁の低下』と書かれている。
そのスライドを表示した途端、聴衆が食い入るように見つめてきた。




