エルフィーvsエルフェン〜姉妹対決〜
「…以上で、私の発表を終わります。ご清聴ありがとうございました」
順番が次々に巡り、エルフィーの発表がようやく完了した。
やはり、壇上に立って発表するのは緊張する。だが同時に、皆の前で自分の成果を認めさせるよい機会でもあるので、自然も熱も入る。
「それでは、エルフィー先生に質問のある方…あ、そちらの方、早いですね」
司会者が言い切る前に、小さい手が挙がっていた。運営者が慌てて、その手の主にマイクを渡す。
ーーー早すぎる。まるで、姉に質問する権利は自分のものだと言わんばかりの、自己主張だ。普段控えめなのに、その欲は強烈だった。
「…お姉ちゃん、発表お疲れ様でした。一点、聞きたいことがあるんですが…」
エルフェンのその一言で、周りの研究者がどよめいた。
特に妹の存在を隠していたわけではないが、確かにこの界隈の研究者達に、妹を紹介したことはなかった。興味のある研究者には、軽く紹介くらいはしておこう。
「この種族魔力の傾向のデータ、そして反応機構について、根拠となるデータがありますか?これほどまでに断言するのならば、相応のソースが必要になりますが。公的データには、そのような記録はなかったかと思いますが」
「…お前、分かってて聞いとらんかね?まぁよかけど…」
そんなことを考えてる間に、エルフェンの言葉はどんどん紡がれていく。だが、そのテンションは、他の研究者に質問する時とはかなり違い、完全に家の中で研究談義をしている時のものだった。
エルフィーは資料の中を探し、該当のデータを見つけた。そしてそれをプロジェクターに映した。
そこには、膨大な量の魔力傾向や形質、反応性に関するデータが表示されている。エストラで働き始める前、流浪の薬師をやっていた頃からオーダーメイド薬品を作る際に収集していた、顧客の魔力データだ。
「非公式のもので申し訳なかとやけど、ウチが数百年間収集し続けた、魔力の個人データを元手に導き出しとる。もちろん非公式のものやけど、数百年間で各種族千例は下らん実例をとっとるけん、十分と判断したからこのデータを論拠として使わせてもろた」
エルフィーがそう言うと、ますます研究者がどよめいた。だが、エルフィーはさらに補足を入れることにした。
「もちろん、このデータを個別に適用したわけやなくて、種族ごとに振り分けた上で、平均化したものを用いとる。…エルフェン、これでよかかね?」
「…十分です。ありがとう、お姉ちゃん」
そう言うと、エルフェンはマイクを返却し、席に座った。その瞬間、エルフィーは聴衆に悟られない程度に、小さくため息をついた。
「…全く…アンタの質問は、ヒヤヒヤするばい」
だが、その頬が緩んでいることに、エルフィーは気付かなかった。
やはり、先程のエルフィーとエルフェンのやり取りの衝撃が強すぎたらしい。聴衆はずっとザワザワしていた。
「えー…他に質問のある方は、いらっしゃいますか?」
そう言われ、何人かが挙手をし、質問をしてきた。だが、エルフィーにとってみれば、普段家でやられるエルフェンからの質問攻めよりも、遥かに気楽であった。
難なく質問を捌き、エルフィーは発表を終えたのだった。




