エルフィーの妹・エルフェン
数日後。エルフィーはエスカン国内にある、大規模なコンベンション施設へと来ていた。
数百名規模の聴衆を入れられるという、国内でも屈指の規模の施設。今日はここで、魔力学会の発表会が行われる予定だ。
さすがのエルフィーも、いつもの魔女っ娘衣装ではなく、控えめな色合いの、フォーマルなレディーススーツに身を包んでいる。
その隣には、同じくスーツを着用した、エルフィーよりもさらに小柄な、小学生にしか見えない少女がいる。
金髪のエルフィーとは対照的に、蒼色のツインテールをした、童顔のエルフ。エルフィーと並んでも、その小ささは際立っていた。
「大丈夫かね、エルフェン?人混み苦手やろ?」
「…お姉ちゃんは、私を何歳だと思ってるの…?」
妹のエルフェン。エルフィーの最愛の妹だ。今回の学会に、聴衆として行きたいと言われたので、連れてきたのだ。
ーーーだが、エルフィーにとっては、妹であると同時に、最も警戒しなければならない者でもあった。
「お待たせしました」
すると、後ろから声をかけられる。振り返ると、いつもの赤い修道士のような服ではなく、こちらもスーツを着たラウラの姿があった。
「いやいや全然大丈夫よ。まだ時間まで余裕はあるけんね」
「……ん」
明るく言うエルフィーと対照的に、エルフェンは小さく頷いただけだった。
昔から、妹はこうだ。活発な自分と真逆の、物静かで冷静なタイプ。少し人見知りもあるようで、見知らぬ相手だと特に寡黙になる。
「エルフェンさんも、お久しぶりです」
「…お久しぶり、です」
全く見知らぬ相手ではないラウラ相手でも例外ではないらしく、ラウラ以上に静かな対応をしている。
だが、特にラウラは気にしていないらしく、エルフィーへ視線を戻してきた。
「では、行きましょうか」
「おう」
三人は並んで、コンベンション施設の入り口へと歩き始める。
ラウラはともかく、エルフィーとエルフェンは非常に小柄なためか、奇特な視線を集めてる気がする。特に今回、魔力関係の学会ゆえ、エルフェンへの視線がかなり集まっている。
「…落ち着かない」
「まぁ…今回はしょんなかよ」
あまり目立つことが好きではないエルフェンにとって、この状況はあまり好ましくないらしい。だが、エストラの講師兼研究者として、名や顔を知られてるラウラやエルフィーはともかく、エルフェンは界隈であまり知られてるわけではない。
ましてや、エルフィーと比べても小柄なのが、拍車をかけている。大人ばかりの中に子供が紛れてるようにしか見えないので、図らずも目立ってしまうのは、無理もない。
「エルフェンさんは、オーディエンス側でいいのですね?」
「…うん、大丈夫」
「分かりました」
受付に向かう前に、ラウラが確認してきた。その手には、ラウラとエルフィー用の招待券と、事前に発行したエルフェン用の入場券が握られている。
エルフェンが頷くと、ラウラは受付へと並んだ。
「…お姉ちゃん。今日は、どんなのが聞けるかな…。ワクワクする」
「ワクワクすんのはよかけど…程々にしたれよ、エルフェン」
「…善処する」
「アテにならん…」
エルフェンは控え目ながらも、学会を楽しみにしているようだ。
しかし、エルフェンに本気で楽しまれてしまうと、学会が終わらなくなる。時間制限もあるので、そこだけが心配の種であった。
エルフィーはそんな妹の様子を見て、ため息をつくことしかできなかった。




