破壊力抜群の挨拶
「…これからペルセ様と一緒に過ごされる方々…そして、小学部ですから、私の授業を受ける機会もあるでしょうし、簡単な挨拶はしておきましょうか」
バルディはそう言うと、膝をついたままミノト達の方へと向き直る。
それを見たミノト達は、「ぴゃっ…!」という、短い悲鳴に近い、間抜けな声をあげていた。
ーーー怯えてるわけではなさそうだ。だが、何だか読み取れる感情がグチャグチャで、よく分からない。
「…ペルセ」
すると、後ろからダリスが声をかけてくる。振り向くと、少しハラハラした様子で事の成り行きを見守っていた。
「ちょっと、身構えておけ」
「何で?」
「…あんな風になったミノトは初めて見るからな。騒ぐかぶっ倒れるか分からん」
ダリスにそう言われてミノトの様子を見ると、バルディを前にして完全に息が乱れてる。しかしながら、他の女子同様恐怖由来ではないことだけは分かった。
「しかしながら、皆さん…しんどそうですが、大丈夫でしょうか?」
バルディは怪訝な表情を浮かべて、若干首を傾けながら、女子達の様子をうかがう。その動作に、一人の女子が何かに撃ち抜かれたように、床にへたり込んでしまった。
バルディは特に何もしていない。にも関わらず、あの反応はなんだろうか。自分の知らない何かがあるのか。
ペルセはそんなことを本気で考えていた。
「だ、大丈夫、です…!あの、何でも、ありません、から…」
ミノトが必死に、言葉を紡いでいる。だが、途切れ途切れであり、声も震えていた。
バルディは不思議そうしながらも、それ以上探ろうとはしなかった。
「ならよいのですが」
バルディはそれだけ言うと、咳払いをした。そして女子達を真っ直ぐ見つめながら、口を開いた。
「改めまして、バルディと申します。毎日ではありませんが、この二学期の間だけ、エストラで魔力運用基礎の授業を小学部で行うことになりましたので、よろしくお願いします」
それだけ言うと、軽く頭を下げた。その瞬間、ミノト達の体の震えが大きくなったような気がする。
魂魄を見ても、感情がかなり昂ぶっている。一体、どうしたのだろうか。
「…き…あ…」
ミノトを含めた女子達は、上手く口を動かせないらしく、言葉にならない声を上げていた。
ーーーそして、しばらくそんな声を出し続けた後、一人残らずその場に倒れてしまった。
「…えぇぇぇ!?何!?何が起きたの!?バルディさん何かしたんですか!?」
「いえ…何もしていないのですが」
ペルセは、目の前に広がる光景にオロオロしていた。バルディは普通に挨拶をしただけだと言うのに、急に女子達が倒れてしまったのだから。
しかも、女子達は意識を保ってるらしく、その口からは「無理…マジで無理…」などという、よく意味の分からない言葉しか出てきていない。
バルディもペルセほど表情には出していないが、戸惑いを隠せていないようだ。
「おいおい嘘だろ!?おいミノト!!」
ダリスは倒れてしまったミノトに慌てて駆け寄った。ミノトも他の女子同様に、意味の分からない言葉を紡いでいるだけだった。
普段は騒がしいミノトであるだけに、違和感満載だ。




