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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 最終章 最底辺の悪魔は人間界に戻る

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始業式の余韻

「…特別講師が、二人も…」

「しかも一人は、小学部に来るんだってよ!?」

「あんなイケメン来てくれるなら、私頑張っちゃう!!」

「うわ、現金なやつ…」


 始業式を終え、帰りのホームルームまで済ませた後の五年三組の教室は、まだ始業式の余韻に浸っていた。


 バルディとイアノ。ペルセからしたら見知った顔ではあるし、事前に来ることを知らされていたから然程動揺はなかった。だが、やはり小学部の生徒達からしたら、相当衝撃だったのかもしれない。


「あのバルディ先生って人、凄くカッコよかった…」

「お前、今日ずっと言ってるよな」


 それはミノトも例外ではないらしく、若干頬を赤らめていた。そんなミノトを見て、ダリスも呆れたようにため息をついている。


 ダリスの様子からすると、ミノトの反応は初見でもないらしい。ただ呆れているだけで、あまり驚いている様子がない。


 面食い、というやつなのか。始業式の際にもバルディを見て、見惚れてるようにしか見えない女子も少なからずいた。全員ではないにしても、人間界の女子は、そういうものなのだろうか。


 ーーーペルセは帰る準備をしながら、そんな様子を眺めていた。


「ペルセちゃぁん、あの二人…特にバルディさんとは知り合いなの?」

「…へ?」


 ミノトからそんなことを聞かれ、ペルセは思わず間の抜けた声を上げてしまった。


「…まぁ…知り合いといえば知り合いだけど」


 しかし、特に隠す理由もない。ペルセは素直に答えた。

 すると、ミノトを含めた周りの女子達が、勢いよくこっちを向いた。


 ーーー何だろう。変なことでも言っただろうか。

 戸惑っていると、のしのしと複数の女子が近寄ってきて、ペルセの肩を掴んできた。その細い腕からは想像もつかない力だ。


「あのカッコいい先生と知り合いなんだよね!?」

「え?…うん、バルディさんとは知り合いだけど…。何?皆、ちょっと怖いよ…?」

「羨ましい!!」


 ペルセが答えると、女子達は四つん這いになったり、壁に拳を打ち付けたりしている。そんなに悔しかったのか。ペルセは不思議に思いながら、そんな様子を眺めることしかできなかった。


「ペルセちゃん…」


 すると、そんな女子達の隣で、今度はミノトがゆらりと立ち上がった。


 ーーー何だろう。ペルセの知るミノトなら、逃げ出そうなんて思うはずもない。だが、今のミノトからは、直感的に逃げ出したいような、そんな雰囲気を感じ取った。


 だが、ここは教室。しかも窓際の席であるため、後退りも難しい。ペルセはすぐに追い込まれてしまった。

 ミノトはそんなペルセにあっという間に追い付くと、ペルセの肩を掴んできた。


「あの人とは、どういうキッカケで知り合ったの!?普段何してる!?どんな人なの!?あと…」

「やめんかバカタレ」

「いだぁっ!?」


 質問攻めにしてこようとしたミノトの後頭部に、ダリスの平手打ちがクリーンヒットした。姿勢を崩したミノトは、ぶたれた箇所を抑えながら、ダリスを睨んでいる。だが、ダリスはそんなミノトに対し、大きくため息を吐いた。


「…こうだと思うと突っ走るのは、お前の悪い癖だぞ。しかもペルセは今日来たばかりの留学生だぞ。あんないきなり迫るヤツがいるか」


 ダリスは他の女子たちにも聞こえるように、そう言った。女子達は言い返せないらしく、気まずそうに顔をそらしながら、すごすごと引き下がっていく。


 ーーー本当に、同い年なのか。狼の獣人ゆえ、周りの男子達より体格がいいこともあり、ダリスだけやけに大人びて見えてしまった。


「…ん?」


 ペルセの感知能力に、引っかかるものがあった。


 見知った者の魂魄が、近くにいる。ペルセはそれを敏感に感じ取り、廊下の方へと目を向けた。


 ーーーいた。見慣れた顔が、二つ。教室の外に並んで、こちらを穏やかに見つめていた。


「…だってぇ…」


 ミノトは不満げに呟いた。後ろの存在には気づいていないらしい。背後で、すごすごと帰ろうとした女子達が、完全にフリーズしてしまってることも。


 先程の仕返しだ。優しく教えてやらなければなるまい。ペルセは平静を保ちながら、優しくミノトに語りかけることにした。


「ミノト。バルディさんのこと知りたいなら…私に聞くより…」


 ペルセはそう言いながら、廊下の方を指差すことで、ミノトの視線を後ろへと誘導する。ミノトはその誘導に釣られ、廊下を見てーーー固まった。


「…本人達に聞くのが、手っ取り早いよ?」


 そこには、先ほどの始業式で紹介された特別講師のバルディとイアノが、並んで立っていた。

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