特別講師の紹介
「…長い…」
学長の話は長かった。
ハイーラからこの手の話が長くなる傾向にある、というのは聞いていたが、実際に味わってみると想像以上だった。
ペルセもぐったりしてきたが、周りの生徒たちもさすがに気怠そうにしていた。
「…ありがとうございました。それでは、特別講師のご紹介をそのままお願いします。特別講師のお二人は、壇上へ」
司会からそう言われ、イアノとバルディが壇上へと上がる。その様子を見た生徒達が、大きくざわめいた。
素人目に見ても分かる、高級そうな黒いドレスを身にまとった上品そうな美女と、スマートに整えられたスーツを着ている仕事の出来そうな美形の男が、揃って壇上に上がったのだ。
特に、女子のキャーキャー言う声が耳に残った。
「皆さん、静かに」
司会の講師がピシャリと言い切ると、一旦は静かになった。だが、それでも大きな声を出さなくなっただけで、ずっとひそひそ声は聞こえ続けていた。
学長はそれをあまり気にすることはなく、そのまま話を進めることにしたようで、普通に言葉を続けた。
「今回、魔界から特別講師として、二名の悪魔を招いております。二学期の間だけの限定ですが…、まずはバルディ先生から自己紹介をお願いできますか?」
学長はそう言うと、壇上にいる二人を見つめる。司会が少し慌てたようにマイクを、司会から見て手前にいたバルディに手渡した。
バルディは咳払いをしつつ、前に出た。
「…ご紹介に預かりました、バルディと申します」
バルディの穏やかで、それでいて芯のある声が、マイクを通じて体育館中に響く。ペルセからしたら久しぶりに聞いた声に過ぎないのだが、それを聞いただけで一部の女子達が倒れそうな様子を見せている。
「この度、このエストラの小学部にて、魔力運用基礎の講義を中心に、座学・実技の特別講義を担当することになりました。数ヶ月という短期ですが、よろしくお願いします」
バルディは淡々とそう言うと、頭を下げた。
先生達や男子生徒からは拍手が飛んでいたが、女子生徒の中には拍手すらできないまま、バルディをずっと見つめてる者も、ペルセからちらほら見えた。
ーーーバルディって、女子ウケいいのか。ペルセはそんなどうでもいいことを考えていた。
「続けて、イアノ先生お願いいたします」
学長にそう言われ、今度はイアノが前に出る。あまり意識したことはなかったが、無駄がない動きのバルディと比べると、イアノの動きは素人目にも分かるほどに育ちの良さが出ている。もちろんバルディにも品はあるのだが、イアノとは方向性がまるで違う。
「イアノと申しますわ。今回エストラにおいて、魔力運用応用…特に高等部の方を主とした精密応用に関する講義を行わせていただくことになりましたの。授業の際はよろしくお願いしますわね」
イアノは穏やかに笑いながら、頭を下げる。
大好きなイアノが来てくれることはありがたいが、高等部の授業を持つなら、小学部の自分と校内で関わる機会は多くなさそうだ。
それに気付いたペルセはガックリと肩を落としてしまった。
イアノの自己紹介に対しても、皆は拍手で受け入れてくれた。
「…ありがとうございました。お二人は明日より本格的に授業を開始いたしますので、もし関わる機会がありましたら、皆さんきちんと講師として扱ってくださいね」
学長は優しくそう締めた。




