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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二章 上位の町・アスティアノ
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サトゥニアの影

 その後の食事の味は、何だかよく分からなかった。

 マールもハイーラも、一言も発さず、ただひたすらに、目の前の食料を食べることしかしなかった。


 ーーーまるで、何かに追われてるように。


 食器の触れ合う音だけが、静かな空間に響いていた。


 せっかくの美味しい食事が、何だか台無しにされた気分だ。


「…食べ終わったんなら、さっさと片付けるわよ」


 食べ終わると、ハイーラは急いで、ペルセ達の使っていた食器を回収してきた。その手付きは雑ではないが、何だか余裕がない。その表情からは、いつもの優しさは感じられなかった。


 ハイーラを食器を洗い始める。しかし、いつものように鼻歌を歌いながらのんびりやる感じではなく、とっとと済ませたい、と言わんばかりに、水音をたてながら、次々に食器を片付けていく。


「…ハイーラさん、怒ってるのかな…」

「…ん〜…まぁ、さっきのことがあったからね〜」


 テーブルを拭きながら、思わずそんな言葉が出る。その言葉を、床掃除しているマールに思い切り聞かれてしまった。


「そういえば、サトゥニアって、何?」

「え…もしかして、知らないの〜?」


 それが、先程から気になって仕方がない。純粋な質問としてマールにぶつけてみると、マールはペルセを見て、呆然としている。まるで、知らないことがおかしい、とでも言いたげだ。


 そんな表情をされても、知らないものは知らない。


「あ〜…ん〜…そうだね〜…」


 何だか、マールの歯切れが悪い。視線が泳いでいる。どう言おうか、迷ってるのだろうか。


「…この、アスティアノを含めた、魔界全てのトップがいる町、ってところかな〜」

「トップ?…偉い悪魔達がいる、ってこと?」

「まぁ〜…そういうこと〜」


 偉い悪魔たちがいる。ここよりも、上がある。

 何だか、想像がつかない話である。


 しかしながら、なぜ、あんなにハイーラが取り乱したのかは、分からない。


「…普通は、関わってこないの」

「え?」


 食器洗いを終わらせたハイーラが、話に入ってきた。その手には、お茶とお菓子が用意されている。


 関わってこない?でも、現にバルディと名乗る男はーーー


「私達アスティアノの悪魔でさえ、関わることはほぼないのよ、サトゥニア関係とは」

「そ、そうなの…?」

「ましてや、向こうから遣いを送ってくる、なんてことは…」


 そう言いながら、ペルセの拭いた机の上に、お茶とお菓子を置く。

 お茶の入った容器からは、湯気が立ち上っている。お菓子からも、甘い匂いがした。食事後でなければ、思わず手を伸ばしていたかもしれない。


「…この、アスティアノで…ううん、この場所で、大事件が起こった。それを、サトゥニア側の悪魔が、認識してる、ってことよ」


 ハイーラは静かに、しかしハッキリと、低い声で言った。


 大事件…あの、アンドレイスとか言う男が、いきなり襲ってきた件だろうか。ペルセには、そのくらいしか心当たりがなかった。


「…多分、アナタに話が一番振られるわ」

「私に?」


 どうして、自分なのだろうか。この中で、一番子供なのに。事件を起こすなんて、そんなことできないのに。


「ここ数日見てたけど、あなたの魔力は、私やマールのものとは全く違うのよ。それが、今もなお漏れ出てる」

「…違いとかあるの?」


 そもそも、自分にそんな魔力があるのか。まるで、実感がない。


 しかし、言われてみると、確かに前と比べて、体の中から何かが漏れてる感覚はあった。じわじわと、内側から何かが滲み出てくるような、そんな感覚が。


「…多分、あのバルディって男も、それに気付く。その先がどうなるか…正直、予想がつかないわ」


 ハイーラはそこまで言うと、こめかみを指でおさえた。頭が痛いのだろうか?


 そう思っていると、来客を知らせる鈴の音がなった。その音で、約束の時間が来ていたことに気付く。


 同時に、部屋の空気が張り詰めた気がする。


「掃除道具、片付けてきなさい。…私が、対応するから」


 先程と違い、ハイーラは覚悟を決めたような表情で、玄関へ向かう。

 ペルセは、持ってた雑巾を慌てて片付けた。


「すみませぇ〜ん、お待たせしてしまいました〜」

「失礼します」


 ハイーラの高い声と共に、バルディが部屋の中に入ってきた。

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