ミノト歓喜の抱擁
「え…えぇぇぇぇっ!?ペルセちゃん!?あの!?」
いの一番に叫び声をあげたのは、ミノトだった。あまりの衝撃に、眠気が完全に吹き飛んだらしい。
ミノト程ではないにしても、ほかのクラスメイト達もざわついていた。その様子を見て、ペルセは胸が熱くなる。
ーーー覚えててくれた。ただ、その一点だけで、嬉しくなる。
「言うまでもないと思いますが…あの時と同様に、皆さん、ペルセさんと仲良くしてあげてください」
「よろしくお願いします!!」
ペルセはそう言うと、勢いよく頭を下げた。
「ペルセさんの席はあそこです」
ラウラはそう言うと、ミノトの隣の、窓際の席を指差す。
以前と変わらない座席を残していたのか、元々余っている席なのかは分からない。だが、どちらにしてもペルセにとっては嬉しかった。
軽やかな足取りで席へと向かい、腰かけた。
「ペルセちゃん…!お帰りなさい…!!」
「…うん、ただいま」
隣に座るミノトが、今にも泣きそうな表情で声をかけてきた。
別れの時に見せた泣き顔と変わらない表情。だが、そこに込められてる感情は、あの時とは正反対だ。
「…いつまでいられるんだ?」
そんなミノトとは対照的に、ダリスは相変わらず落ち着いている。だが、声に震えが残っており、感情を完全には隠し切れていないのが見え見えだ。
「それと、もう一つお知らせがあります」
ペルセが答える前に、ラウラが強制的に視線を前へ向けさせる。
ーーーそういえばそうだ。魔界からやってきたのは、自分だけではない。「あの二人」がいることも、忘れてはいけない。
「ペルセさんの留学とは別に、二学期の間限定で、魔界から特別講師を招いています。本日の始業式で紹介がありますから、詳しくはそちらで説明がなされます」
ラウラがそう言っていると、チャイムの音が響いた。予定では、ラウラの言っていた通り、まずは体育館に移動して始業式となっていた。
「では皆さん、貴重品だけ持って、体育館に向かいましょう」
ラウラはそう言うと、廊下へと出ていく。その後へ続くように、他のクラスメイトも廊下へと移動していった。
ペルセもそれに続けて移動しようとしたが、後ろから何かにぶつかられた。見てみると、そこには抱きついてきてるミノトの姿があった。
「ミノト…」
「本物…本物のペルセちゃんだぁ…」
「えぇ〜…」
後ろから腰に抱きつかれてしまって、動けない。ペルセは困ったようにダリスを見た。
しかし、ミノトをたしなめる側であるダリスでさえ、ため息こそついているが、首を振っている。どうやら、今回ばかりは少しの間だけでも好きにさせてやれ、ということらしい。
無理矢理引き剥がすわけにもいかず、ペルセはオロオロすることしかできなかった。
「…ミノトさん。時間に遅れますよ」
「うぅ…」
「…今日は午前終わりですから、放課後にたっぷり時間がありますよ」
ラウラから優しくそう諭され、ミノトは渋々ペルセから離れた。
これから始業式があるのだから、仕方がない。とはいえ、ペルセとてミノトに会いたかった。
「…ペルセちゃん?」
「このくらいなら、いいよね?」
ペルセはそっと、ミノトと手を繋ぐ。ハグまでされてしまっては動けなくなってしまうが、これならば普通に移動できる。このくらいなら、バチは当たるまい。
ラウラもその様子を見て、苦笑しながらも咎めるつもりはないらしい。そのまま体育館へと足を向けていった。
「…お前ら。さっさと行くぞ」
「ダリス!!せっかくの雰囲気ぶち壊し!!」
「うるさい。時間が迫ってんだ。再会早々怒られたくはねぇだろうが」
「ぐぬぬぅ…」
何だかんだ言いながら、ダリスは相変わらず優しい。口は悪いが、それでもミノトがペルセ相手に、感情のまま振る舞うことを全く咎めていない。
ーーーこの二人も、やっぱり仲が良い。来て早々、ペルセは改めて痛感した。
「行こ!ペルセちゃん!!」
「そうだね」
ミノトは繋いだ手を引っ張り、ペルセを連れて体育館へと向かう。その後ろを、呆れながらも穏やかな表情で見つめるダリスが歩いていた。




