今後の動き
「一先ず、今週いっぱいは書類の処理や、代替講師達からの引き継ぎを行っていただく予定です」
「…やはり、そうなりますよね」
学長の言葉に、ラウラは大きくため息をついた。
無論、必要なのは分かっている。だが、分かっていても面倒なものは面倒だ。
正直な所、魔界で散々思考実験やヴァーレアとの研究の話し合いをしていたので、早くそれを試したくはあった。だが、今週はそれも難しそうだ。
「まぁ…私も手伝いますから。なるべく負担をかけないように、こちらも動きますから」
「それはありがたいんですが…良いのですか?お手を煩わせてしまって…」
「今回の休職は、急ではありましたが、ラウラ先生のせいではありませんので」
学長の言葉に、ラウラは驚いてしまった。学長自ら、自分の書類処理を手伝ってくれるというのか。
しかもそこに、ほとんど抵抗を感じていないようだ。
断ろうかとも思ったが、学長の真面目な顔を見て、止めるのを諦めた。
ーーーこの表情の学長は、譲らない。長い付き合いで、それが分かっていた。
「何より、ラウラ先生と話したがる生徒は、多いでしょうしね」
「…まぁ」
「早めに終わらせれば、前倒しで通常業務に戻せますから」
そう言われ、ラウラも否定できなくなる。
自分が担任している、小学部の五年三組の生徒達の顔が、頭をよぎる。ミノトやダリス、その他の生徒も、自分を慕ってくれている。
そんな生徒たちと、一刻も早くお話がしたい。教師としてのその想いまでも汲んでくれてるのは、非常にありがたかった。
「…ありがとうございます」
「全然。むしろ、もっと労ってやらなければならないところなくらいです」
ラウラが頭を下げると、学長は穏やかに笑っていた。
ーーー正直、レボルタなんかよりもこの人の方が、統治者としては格上なのではないか。そう思わされる程だった。
「で…話は全く変わるんですけど、ヴァーレア先生に入れ替わってもらっても?」
「え?構いませんが…なぜ?」
「少し、別件でお話したいことがありまして」
「はぁ…」
いきなり学長から言われ、ラウラは戸惑った。先程までの温かい気持ちが、一気にふっ飛ばされた気がする。
だが、学長の目は、先程と同じか、それ以上に真剣なものだ。ラウラは目を閉じ、自身の肉体をヴァーレアへと受け渡した。
「…何なんだろうね?」
「私にも分かりません」
ヴァーレアにも心当たりがないらしく、精神世界で戸惑いながらも、表へと出ていった。
ラウラの肉体でありながら、銀髪が薄い紫に染まり、ヴァーレアが表に出たことが分かるような状態になった。
「…何か、ボクに御用でしょうか?」
「入れ替わったようですね」
ヴァーレアが戸惑いながら、学長を見つめる。学長はヴァーレアが表に出たことを確認すると、懐からタブレットを取り出し、画面を見せてきた。
そこには、とある提案書類が掲載されている。それを見たヴァーレアは、精神世界に引っ込んだラウラと共に、目をパチクリさせるのであった。




