必殺の反撃
レボルタは唖然としている。
ドヤ顔で、こちらの鼻っ柱を折るつもりで出した資料を見せた結果、逆に自分へ質問がとんでくるとは、露ほどにも思わなかったのだろう。
確かに、レボルタがヴァーレアを所有していた、という事実を証明することは難しいだろう。なぜなら、所有などしていないのだから。とはいえ、所有していないことを示すことも困難だ。
だが、そここそが反撃の糸口だ。逆に言えば、ラウラがヴァーレアと契約を結び、形式上はラウラが所有してることを証明できればよい。ヨルゼフはゆっくりと手を挙げた。
「…ヨルゼフ国王。何か意見が?」
「この場で資料を出すことは不可能ですが、少なくともラウラさんがヴァーレアさんと、長らく『契約』し続けてる、と証言できる者を紹介することは可能です」
そう言うと、全員の目が一斉にこちらへと向いた。レボルタに至っては、恨みのこもった視線を向けてきている。
ーーーまるで、そんなヤツ等いない、とでも言いたげだ。
だが、レボルタは重大なことを見落としている。ラウラがどこで働いていて、ヴァーレアという悪魔が、一体何者だったのかを。
「…差し支えない範囲で、聞いても大丈夫か?」
「何名かいますが…まず、ラウラさんの職場である、エストラの講師達。エストラにはエルフのような長命種もいますから、確認は取りやすいか、と」
「…ふむ」
「あとは…ヴァーレアさんのご実家である、ゴエティフス家の方々です。資料の最後にも書かれています通り、ラウラさんと直接話し合いをし、正式にゴエティフス家として、ヴァーレアさんをラウラさんへ託しています」
ヨルゼフがそう言い切ると、裁判官は慌てて資料を確認する。その部分は、ラウラ個人の意見陳述書ではなく、ゴエティフス家としての公的な記録ゆえ、裁判官も無視できないだろう。
少しして、裁判官達が顔を上げた。
「…確かに、その旨が書かれている。ゴエティフス家として、ラウラさんを次女のマスター…契約主と認め、託した…と」
その一言は、重く響き渡った。レボルタでさえ、目を見開いている。
ヴァーレアの家族が、ラウラを受け入れ、認めている。その事実が、受け入れ難いのだろう。
「…そん、な…あれは、我々、の…」
レボルタはその場で崩れ落ちる。
数百年前から狙い続けていた悪魔と、それを奪ったと思っていた人間。その二人は、家で公的に認められた、言わば夫婦のような存在。
一度成立した契約に割り込むことは、一方的なものであっても容易ではない。しかし、それをラウラはヴァーレアとの契約を成立させ、しかもヴァーレアもそれを受け入れている。
ーーーすなわち、ドゥローラはヴァーレアを『所有できていなかった』ことになる。
「…どちらが正しいか、明白だな」
裁判官は厳かに呟く。
最後の最後は、レボルタの自爆だった。正確に言えば、自爆特攻をして失敗した、といったところか。だが、これで良かったのかもしれない。自らの愚かさで、最後まで守りたかった組織と、一蓮托生で共に沈むことができたのだから。
本来ならば、王としてこのような感情を持つことは許されない。だが、誰にも聞こえないほどの小さな声で、ヨルゼフは呟かずにはいられなかった。
「…自業自得。お似合いの末路だ」
ヨルゼフは項垂れるレボルタを見ながら、気づかれないようにほくそ笑むのだった。




