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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十一章 ドゥローラへの裁き

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狂信者の義理

「なぜ…?それの何が悪いのかを、逆に聞きたいのだが?」


 レボルタは平然と、裁判官に言い返す。隣にいるソロモニアの首領は特に反応しておらず、止める気もなさそうだ。

 裁判官が閉口すると、レボルタは言葉を続けた。


「人間以外に人権はないんだよ、この世界は。人権がない奴なのだから、どう扱おうが咎められる筋合いはない。国際的に違法になるのも、人権がどうのとか言う話なのかもしれんが、そもそも人権を持つ相手ではない以上、人権侵害はしていないのだからな」


 ーーー追い詰められても、この男は変わっていない。もはや、本気で善だと思っている価値観なのだろう。


 だが、裁判官は大きくため息をついた。


「質問に答えなさい。あなたの思想は聞いていない。行動の理由を聞いてるのだ」


 裁判官の言葉に、レボルタはまた不機嫌そうな表情になるのだった。


 ヨルゼフも息を呑む。どういう意図で、レボルタがソロモニアを庇い続けたのか。なぜ、切り捨てなかったのか。

 ヨルゼフも正直、気になってることではあった。


「…軟弱者が」

「何だと?」

「極めて正しい行動をしている模範的組織だったからに決まってるだろう。お前らは正しいことをしている者を咎めたり、遠ざけたりするというのか?」


 レボルタの態度は、完全に相手を言い負かしたとでも言いたげな、鼻につくものだった。傍聴席で、サトゥニアが額に青筋を浮かべていることには、全く気付いていないようだ。


「悪魔にあるのは、我々に捧げる魔力のみだ。その命と意志など不要。悪魔の取り扱いを分かっていれば、我々は国を握り続けられる。現に、数百年前から我々ドゥローラ一族はずっと、ソロモニアと縁を持ち続けたことで、安定した国家運営ができていた。それを、魔界が、エスカンが破壊したんだ!!」


 レボルタは裁判官に向けて叫んだ。痩せこけた頬が目立つのが、滑稽に見える。

 ヨルゼフは呆れたようにため息をつくしかできなかった。


「ソロモニアを切り捨てるのは、国を捨てること、そして俺のご先祖への冒涜でもある!!」


 レボルタは鼻息荒くそう言った。

 レボルタの演説を聞いたソロモニア首領は、その目に若干の光を取り戻しながら、レボルタを見つめていた。


 ーーーてっきり反省したのかと思ったが、違ったようだ。やはり、数百年間積み上げた体質は、そう簡単にへし折れないか。


「…そうか。では、この資料についてはどう説明するのだ?」


 すると、裁判官はプロジェクターを用いて、ヨルゼフが提出したヴァーレア強制召喚事件の資料を写した。それらを見て、ソロモニアの首領とレボルタは動揺を隠せないようだった。


「現代のことについては、一万歩譲ってそれを通すとしよう。だが、貴殿らはこの事件の被害者を再度狙った。しかも、被害者の人間を、今でも裏切り者だと認識して襲っている。正規の手続きでエスカンに亡命したにも関わらずだ。この事件のことを、お前達は詳しく知っていたのか?」


 裁判官からそれを言われ、レボルタは歯軋りしている。


 ーーー予想外の使われ方だ。ソロモニアの前科を追及するだろうとしか思ってなかったのだが、それ以上の追及をしてくるとは。


 だが、確かにそうだ。少なくとも会合の際に、ラウラを裏切り者呼ばわりしていたので、間違いなくこの事件のことは知っているはずだ。とはいえ、数百年前のことでもあるし、どこまで詳しく知ってるかは分からなかった。


「…そんなものを捏造してまで、貶めたいのですか…!?」


 ソロモニアの首領が、苦し紛れに呟いたのを、ヨルゼフの耳は聞き逃さなかった。

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