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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十一章 ドゥローラへの裁き

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国際裁判開廷

 そこからの展開は、早かった。

 ヨルゼフが資料のコピーを、周辺国へ共有してからというもの、王達はもはや呆れ返っていた。


 だが、ヨルゼフは冷静に、とある提案を国王達に行った。その結果、二日後にヨルゼフは別の国にある国際司法裁判所に呼ばれていた。


 隣国のドゥローラの国王がレボルタであるがゆえ、自分の在位中に、縁がないとは思っていなかったわけではない。だが、このタイミングで呼ばれるとは思っていなかった。


 本来ならば、ドゥローラ国内の警察組織や司法組織に託すべきところだろう。だが、今の中間層以上がごっそり抜けてしまったドゥローラに、その機能は期待できない。それゆえ、周辺国とも連携を取り、無理を言って急遽、国際司法裁判を行うことにしたのだ。


 ーーーソロモニアも、レボルタも。完全に政治的に中立なこの裁判所で、裁いてもらうこと。それが、ヨルゼフの考えた、最後の一手だった。


「…行くか…」


 ヨルゼフは、目の前の大きな木の扉を、ゆっくりと開ける。木の軋む重い音がする。


 扉の先には、自国の最高裁判所よりも立派な素材で作られた大法廷が鎮座している。裁判官達の正面にあたる被疑者席には、すでにソロモニアの首領と、レボルタが拘束されている。

 さすがのレボルタも、国際司法裁判所からの呼び出しともなると、無視することはできなかったらしい。

 魔界の介入があってから、まだ一ヶ月にも満たない期間しか経ってないというのに、レボルタもソロモニア首領も、すっかりやつれてしまっている。国が末期を迎えてる状況ならば、支え合うことなどできはしないだろう。


 傍聴席を見ると、サトゥニアが座っている。参戦するつもりはないらしいが、結果を見届けに来たようだ。確かに自分から連絡はしたが、本当に来たのは予想外だった。


 ヨルゼフは状況を把握し終えると、裁判所の側面、レボルタ達から見ると左側にいる座席へと腰掛けた。


「…これより、裁判を行う。被告人は前に出よ」

「クソが…」


 裁判官が粛々と声をかけると、レボルタ達は前へと出た。

 しかし、その表情は、明らかに不満気だ。このような場に呼び出されても、まだ自分が正しいとでも思っているのか。


 ーーーどこまでも、状況が理解できていないらしい。もっとも、その態度をたしなめるのは、もう自分の役割ではない。見なかったフリをし、行く末を見ることにした。


「貴殿の組織ソロモニアは、魔界からの留学生である女児、及び魔界からの客人、さらにはかつて自分達との因縁があったエスカンの国民を襲撃。さらに長期に渡る悪魔の監禁と搾取、及び未遂に終わったとは言え、魔界からの使者も拘束、隷属を行った。間違いないか?」

「…はい」


 ソロモニアの首領は、驚くほどあっさりと事実を認めた。

 これほどの大事になってしまったのだから、揉めたところでメリットはないと理解しているのだろう。


「なぜ、そのようなことを行ったのだ?」

「…我々が悪魔を使役することで、人間界でのアドバンテージをとり、ひいては国王と共に、絶頂の瞬間を味わい続けようと…」

「ではなぜ、女児を狙ったり、魔界の使者を拘束したりしたのだ」

「…あの女児は、伝説的ともいえる白色魔力を有していました。ゆえに、我らの使い魔として隷属させれば、我々の支配がますます強固になるか、と。魔界の使者についても、ただ者ではないであろうと判断し、捕らえて我々の支配下に置きたかったのです」


 ソロモニアの首領は、終始俯いたままではあったが、質問にはすんなりと答えていた。


 ーーー随分とふざけた動機だ。ずっと頂点に居続けようとしたということか。そのために、悪魔という一個体の意思は、完全にないものとして扱われていた。

 種族差別がはびこっていた数百年前の人間界なら、まだ通ったかもしれない。だが、今の人間界では、それは通らない。


 とはいえ、ラウラにも魔界側にも分からなかった、ソロモニア側の動機がようやく、少し分かった。それだけでも、この裁判を開いた価値があるだろうか。


「…レボルタ・ドゥローラ。貴殿はソロモニアがこのような思考をしていたことを、認識していながら咎めるどころか、助長した。なぜ、そのようなことをしたのだ?」


 裁判官は、続けてレボルタへと質問を投げた。ソロモニアは全面的に白旗を上げてるような状態だったため、レボルタも大人しく答えるかと思っていた。


 ーーーだが、その期待は儚くも裏切られてしまうこととなるのだった。

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