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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十一章 ドゥローラへの裁き

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エスカン国王、最後の一手

 その日の夕暮れ。

 そろそろ仕事を切り上げようかと思っていたヨルゼフのパソコンに、一通のデータが届いた。


 中身を見ると、魔界からの連絡だ。その一報で、ヨルゼフの頭の中に、今日行ったばかりのサトゥニアとのやり取りが過った。


 ーーーまさか、もう書類ができたとでも言うのか。時計を見ると、あの電話があって、半日はおろか、まだ四時間程度しか経っていない。魔界の実務能力の高さには、舌を巻かされる。


 端末を操作し、データを開く。するとそこには、電話でサトゥニアも言っていた、ヴァーレア強制召喚事件の詳細な捜査記録が載っていた。マスキングはされており、一部黒塗りになってはいたが、支障はなかった。


「…なんだよ、これ…」


 あまりの事件の酷さに、ヨルゼフは絶句してしまう。

 ラウラが資料に記していたことは、本当だった。ざっと見るだけでも、それを確信させられるだけの捜査資料だった。


 数百年前の、魔界のログ。本当に忽然と、ヴァーレアという悪魔が行方をくらませてしまった、という記録がある。

 当時はまだ、人間界からの召喚儀式が比較的あった時代であったため、召喚自体は事件にはなっていない。だが、ヴァーレアが行方を眩ませたと思われる地点には、明確にヴァーレアの抵抗した様子の分かる、魔力の残滓があったらしい。


「…そりゃ、誘拐を疑っても無理はないよな…」


 人間界の通常の誘拐事件でも、明らかに本人の所持品が散らばったりしていたなら、間違いなく同意はなかったと見なされるであろう。

 ヨルゼフは、さらに記録を読み進めた。


 事件が起きてから二ヶ月ほど経過したあと、ヴァーレアが人間界で発見された、との記録がある。


「二ヶ月…!?」


 ヨルゼフは思わず、そこを二度見した。そして、机にしまい込んでいたラウラの意見陳述書を取り出し、確認をする。それによれば、ドゥローラでヴァーレアを助け出して、一ヶ月程度でエスカンへ逃げ込んでいたらしい。


 もちろん、ラウラの意見陳述書は公的記録ではない。だが、添付されていたゴエティフス家の記録を見返しても、二ヶ月ほど経った頃に、ヴァーレアが見つかったとする記載が確認された。


 しかもどちらの資料を見ても、ヴァーレアが「人間界の契約相手であるラウラと暮らすのが楽しい」、という理由で人間界への帰還を拒否した、と記されている。


 ゴエティフス家の記録では、その後ラウラときちんと話をした上で、正式に娘を託したと書かれているため、本当のことなのだろう。

 まるで、嫁にでも出したかのような書き方で、少し噴き出しそうになってしまった。


 ヨルゼフは慌てて咳払いをし、平常心に戻る。ここまで公的資料と一致しているのならば、ラウラの意見陳述書も信憑性が高いと判断して問題はなさそうだ。


「…これは、思ったよりも根深そうだ…」


 数百年前の、ヴァーレア強制召喚。それが原因で、魔界は人間界との交流を閉ざしたと、手元の資料には明記されている。


 数百年ぶりの、魔界と人間界の交流事業。その象徴としてやって来たペルセにも、毒牙を伸ばした。それも、あろうことか、かつて人間界との交流を取りやめさせた組織であるソロモニアが。


 彼らのやったことは、理解していたつもりだった。だが、過去のことまで含めると、あの組織は数百年経っても変わってない。


「他所の国の組織ゆえ、自壊を待つつもりだったが…これは早々にケリつけた方がいいな」


 ヨルゼフはそう言うと、端末の画面を切り替え、とある書類作成に取り掛かる。外交部にはまた負担をかけるかもしれないが、緊急の案件だ。


 ーーーヨルゼフが帰れたのは、結局すっかり日が沈んだ後になってからだった。

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