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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十一章 ドゥローラへの裁き

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魔王のつぶやき

 鍛錬場に戻ると、すでにペルセは鍛錬メニューを終わらせたところだったらしく、道着姿のままでベンチに座り、ゴクゴクとジュースを飲んでいた。


 ペルセが小さな手でボトルを傾け、喉を鳴らしながらジュースを飲んでいる。そんな穏やかな光景が広がっていた。


「…おう、戻ったぞ。鍛錬は終わったみたいだな」

「お帰りなさい、魔王様」


 サトゥニアが声をかけると、ペルセの隣に座っていたデメナが、いち早く返答してきた。


 しかし、クロニオスがいない。どこに行ってしまったのだろうか。


「デメナ。クロニオスはどこだ?」

「主人でしたら、あちらにいますよ」


 デメナがそう言って指差した方向へ視線を向けると、少し離れた場所でスーツを脱いで筋トレに励んでいるクロニオスの姿があった。


「…アイツは何してんだ」

「ペルセさんの鍛錬を見たあとは、いつもああですよ。一度体がうずくと、熱を発散してやらないと落ち着かないらしくて」

「ったく…あの筋トレバカが」


 サトゥニアは呆れたようにため息をついた。


 自分も筋トレすること自体は好きだが、なぜわざわざ父娘の時間でやってるのか。しかもデメナの口ぶりからすると、日常風景らしい。


「あれ?サトゥニアさん、お帰りー」


 すると、ようやくペルセがこちらの存在に気付いたらしく、無邪気な笑顔でこちらを見てきた。その頬には、鍛錬で吹き出したであろう汗が滴っていた。


 ーーー心底、楽しんでいることが分かる。親子の時間、というのもあるのかもしれないが、何よりも純粋に、自らの成長を喜んでいるのかもしれない。


「…今日も頑張ったな、ペルセ」

「うん!!」


 そう声をかけてやると、ペルセは大きく頷いた。そして再び、ジュースを飲み始めるのだった。


「魔王様、それはそうと…先程、何かあったのですか?少し慌ててたようですが」

「…やはり、お前にはお見通しか」


 デメナが心配そうに声をかけてくる。デメナの魂魄観察の前では、例え魔王である自分であったとしても、デメナが探れば感情など丸裸なのだろう。

 そうでなくとも、普段からの様子を知っている聡明なデメナなら、違和感を感じてもおかしくない。


「単純な話だ。ヨルゼフ国王から、問い合わせが来たんだよ」

「問い合わせ?」

「ヴァーレアの事件に関しての問い合わせだ。どうやら、ラウラから情報を流されたらしくてな」


 本来なら、聞かれたからといって素直に答えるような内容ではない。だが、今回は質問者が最高幹部の一角であるデメナなのだ。

 ましてや、今回のソロモニア事件では、娘であるペルセと、直属の配下であるイアノが巻き込まれた関係者でもある。黙っている方が不誠実だろう。


「ラウラさんが…」

「だから『本当です』と言っておいたし、ちゃんとした根拠資料も送る。それでどうなるのかは、まぁこれからだが…」


 サトゥニアはそう言うと、ジュースをゴクゴク飲んでいるペルセへと視線を向けた。ペルセは視線に気付くと、ボトルから口を離さないまま、不思議そうに首を傾げていた。


「…近いうちに、ソロモニアはなくなるだろうな。この一発が…まさに、『ダメ押し』だ」


 サトゥニアは、静かにそう呟いた。デメナですら意味が理解しきれなかったらしく、こちらを不思議そうな表情で見つめる。


 だが、それで良い。人間界の一国が崩壊の道を歩んでることは、まだデメナが知るべきではない。自分と、クロニオスだけが知っていればよい。


 サトゥニアは、鍛錬の天井を見上げたまま、しばらく動かなかった。

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