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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十一章 ドゥローラへの裁き

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破壊力激高の資料

 三日後。


 エスカン国王の執務室で、ヨルゼフは分厚い意見陳述書を読んでいた。


 常々、国民の意見を仰ぐために、エスカン内の随所に意見箱を設置している。箱の中に仕込まれた転送陣が起動し、ヨルゼフのいる執務室の棚の中へと送られてくるのだ。

 だが意見陳述書と言っても、せいぜいA4サイズ数枚程度の、比較的薄い資料であったため、ヨルゼフが読むことにそれほどの負担はなかった。


 しかし、今日は違った。執務室で仕事をしていると、このやけに分厚い意見陳述書が送られてきたのだ。


 しかもその中身を見ると、ラウラからの意見陳述書だった。

 ーーーそんなもの、無視できるはずがない。

 業務を中断し、ヨルゼフはその書類を読みふけっていた。


「…何ということだ…」


 資料には、ヨルゼフも知らなかった事実が多数書いてあった。


 ラウラが元々ドゥローラの国家研究者であり、悪魔をその身に宿したまま亡命してきたことは、書類上の記録等で知っていた。だが、ソロモニアとの因縁や、ドゥローラから逃げてきた経緯までは、細かくは知らなかった。


 さらに言えば、魔界側の被害者の一人であるイアノ、そして数百年前の被害者だったヴァーレア。この二人が、魔界内ではかなりの名家のご令嬢であったという事実も、全く知らなかった。


「ソロモニアも…どれだけの相手を敵に回しているのだ…」


 ヨルゼフは頭を抱える。


 もしこの資料が全て事実であったとするならば、ソロモニアの体質は昔から魔界へかなりの不義理をしていたことになる。


 いかに当時の国王が依頼したとしても、魔界から悪魔を無理矢理召喚し、それを隷属させようとした。さらには魔界への退路も断ったことでヴァーレアが魔界へ帰れなくなり、その結果魔界の交流も断絶してしまった。

 ーーーそう、資料には記されている。


「…これは…資料のコピー…?」


 資料の後半には、明らかに人間界の形式とは違う書類も挟まっている。その表題に書かれてる文字を見て、ヨルゼフは息を飲んだ。


『ゴエティフス家次女行方不明案件』


 日付からすると、ヴァーレアの事件が起きた後の、家の調査資料だろうか。少なくとも、最近のものではない。


 子供がいきなり行方を眩ませたとなってしまっては、当然親としても心配するだろう。ましてや、ヴァーレアのいたゴエティフス家はかなりの名家らしいため、尚更のことだ。

 手書きの資料を見ていると、事務的な文体ながらも、随所に震えと滲みが見受けられる。読んでいるヨルゼフでさえ、その文から当時の苦しさと無力感を受け止めてしまうほどだ。


 ーーーこの系統の文書は、時々見る。「行方知れずの子供を助けて」、と本気で言ってくる、親の嘆願書。それと同じ慟哭が聞こえてくるような、重い資料だ。


「…確認せねばな…」


 とはいえ、これほどの重大案件は、自分でも確認しなければならない。

 無論、ラウラが嘘をついてるなどとは思っていない。これほどの超大作を、わざわざ捏造する理由がない。


 ーーーだからこそ、確認を取るべきなのだ。これが本当のことならば、最近起きたことだと思っていたこの外交問題が、数百年間に及ぶ魔界とソロモニア、さらにはドゥローラとの大問題になる。


「…場合によっては、諸外国と連携して、ソロモニア組員を全員捕縛、ということにもなりかねんな…」


 ヨルゼフはそう言いながら、魔界の王であるサトゥニアへの通話をかけるのだった。

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