ラウラの反撃書類作成
エルフィーとの通話を切ったラウラは、一心不乱にパソコンへ向かい、書類を急ピッチで作る。
今の魔界との揉め事も、解決する糸口は見えていないし、恐らく解決しないまま国が滅ぶだろう。それゆえ、ラウラ自身が動くつもりはなかった。
だが、視点が欠けていた。レボルタやソロモニアには同情しない。だが、このまま自然な瓦解を待っていては、ドゥローラに残された国民達はどうなる。もし諸外国が彼らを何とかするなら、早く事件を解決した方がよい。
ーーー決して、エルフィーの辛そうな声色に心を動かされたわけではない。
「…ランちゃん、何するつもり?」
精神世界から、ヴァーレアがラウラの頭の中に語りかけてくる。いきなりラウラが動き出したので、意図が分からず不安なのかもしれない。
「あなたを強制召喚したことに関して、ソロモニアは何ら責任を取っていませんよね?」
「え?」
「…魔界との揉め事は、あくまでもペルセさんを狙ったことが中心です。ヨルゼフ国王陛下が間を取り持ったことも、被害者がエストラの留学生であったことと、事件現場がエスカンであったのが要因です。ですが、私については?」
ラウラはそう言いながらも、指の動きを止めない。画面に映る白紙が、どんどん文字で埋まっていく。
研究でしか見せないようなラウラの必死さに、ヴァーレアも絶句しているようだ。
「…国王陛下にしてみれば、私はエスカンの住民ではありますが、それだけです。もちろん、私がドゥローラから亡命してきた人間であり、悪魔を宿してることは承知の上でしょうけど、細かい経緯までは知らないはずです」
「え…?だって、ボクらあの時、説明したよね…?」
「当時の国王陛下から、何世代入れ替わってると思ってます?…概要くらいは知ってるかもしれませんが、詳細までは知らないでしょう」
ラウラはそう言いながら、さらに書類作成を続けている。
ヴァーレアは精神世界で戸惑ってるようだが、そんなのに構っていられない。
「…別に当時の罪に関して、今さら糾弾するつもりは毛頭ありません。ですが、あなたを無理矢理呼び出した件は、今魔界と揉めてる件とは性質が違います。魔界という場所との交流断絶になった、明確な要因ですからね」
ラウラはそう言いながら、一瞬だけ動きを止める。
ここまで勢いのままに書いてきたが、自分の証言だけで、果たして信用を得られるのか。
ーーー明確なリソースをつけたほうがよいのではないか。研究者としても、そこを無視することはできなかった。
「ヴァーレア」
「なに?」
「ゴエティフス家の公的記録、アクセスできたりしますか?」
「…できると思う。最悪姉様に頼むけど…。何か必要?」
「あなたがいなくなったことが当時事件になったのなら、家としての記録が残ってないかと思いましてね」
ーーーこれは長期戦になりそうだ。ラウラは腹を括り、椅子から立ち上がるのだった。




