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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十一章 ドゥローラへの裁き

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崩壊した繁華街

 一方その頃。

 城壁の外にある、ドゥローラの繁華街。


 クロニオス達が来た時は、栄えていた。露店は営業していたし、目玉商品の宣伝をしている店員が、大声で客寄せをしている、普通の繁華街であった。

 だが、今は違う。店には商品も人員もおらず、奴隷を捕らえていた檻もすでに破壊されて中身は空になっている。

 綺麗に舗装されていた道には、ゴミが散乱しており、もはやゴーストタウンのような雰囲気すらあった。


 風に乗って、商品棚からリンゴが一つ落ちる。リンゴは転がっていき、一人の女性の靴に当たる。


 橙黄色の魔女っ子衣装を着て、メガネをかけている、子供と見間違えるほどに小柄なエルフの女性。その女性、エルフィーはそのリンゴを拾いながら、辺りを見回した。


「おーおー…こりゃ予想以上に酷か」


 エルフィーはラウラの同僚で、エストラの講師でもあるのと同時に、薬売りとしても働いている。薬売りとしての取引が近くの国であったため、偵察も兼ねてついでに寄ってみただけだった。


 目の前に広がる光景に、驚きを禁じ得ない。つい二週間程前まで栄えていた繁華街だとは思えない。同族のエルフが普通に奴隷として販売されていたので、エルフとしては心地よい場所でもなかったが、ここまで寂れてしまうと、逆に同情心がわいてくる。


 手に持ったリンゴを持て余していると、後ろから視線を感じる。振り向くと、エルフィーの持つリンゴを、物欲しそうに見つめているネズミの獣人の男の子がいた。

 全身土埃まみれで、痩せこけている。まともな服も着ていないことから、どこぞで脱走した奴隷だろうか。


 本来ならば、保護案件だ。だがあいにく、今のエルフィーにそんなことをする財力も権限もない。


「…何ね?このリンゴが欲しかとね?」


 少年にそう聞くと、カクカクと頷いた。


 持っていても、持て余すだけだ。ならばいっそ、渡してしまおう。万引きになるかもしれないが、それを咎める店員も、もはやいない。


「ほれ。あんまいっぺんに食うなよ」


 エルフィーはそのまま、リンゴを少年に手渡した。少年はリンゴを受け取ると、お礼を言わず、脱兎のごとくエルフィーから逃げるように姿を消した。


 エルフィーはその後ろ姿を、しばらく見つめていた。彼も、ドゥローラという国の、レボルタという国王の政治の被害者なのだろうか。


 その後、エルフィーは歩き始めた。

 深くまで探るつもりはない。少し探索したら、帰るつもりだ。


「国一番の繁華街がこのザマやと…もう商売相手としちゃあ成り立たんばい…」


 しかしながら、寂れっぷりは恐ろしい。数十年かけてゴーストタウンと化すならばまだ分かる。しかし、このドゥローラという国は、二週間程度でここまで寂れてしまったのだ。


 どこを見渡しても、店は営業していないし、時々見かける人影も、露店で売られていたと思われる奴隷が彷徨っているだけだった。


 ーーー国として、奴隷を保護する政策が打ち出されるのだろうか。しかし、自国民は自国で管理すべきというレボルタの主張があるゆえ、その政策を実施するにしても、レボルタが退陣してからになるだろう。


 そんなことを考えながらのんびり歩いていると、側道から馬車が飛び出してきた。


「ん?…止まれ!!誰かいるぞ!!」


 馬車の御者は、慌てて馬を停めた。馬はエルフィーに追突しないギリギリのところで、ようやく止まった。


 権力者特有の、派手な馬車だ。国内でそれなりの地位をもってる人物のものだろうか。エルフィーがしばらく騎手を見つめていると、御者の男が口を開いた。


「…君、この国の住人ではないな。こんな国に、何か用か?」


 その声は冷静、というより冷徹な声色だった。

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