父に会いたがる子供
ペルセにとっては、不思議でたまらない。この鍛錬そのものは、自分が両親と再会してから十年間、定期的に続けてきた習い事のような感覚だ。
もちろん、最初から高い精度を要求されたわけではないが、生来の器用さもあったのか、デメナとイアノから鍛錬を受け続けた結果、今に至る、と言うだけだ。
それも話すと、ヴァーレアは食べることも忘れて、口をあんぐりと開けていた。
「…はしたないですわよ、ヴァーレア。食事中ですわ」
そんなヴァーレアを、姉であるイアノがたしなめる。指摘されて、ヴァーレアは慌てて口を手で覆った。
「私としては、貴重な母娘の時間でもありますからね。それに、娘の成長は、親としても嬉しいものですよ」
デメナはそう言いながら、少し照れくさそうに笑っている。
何だか、気恥ずかしい。デメナにつられて、ペルセも少し顔を赤くしてしまう。
「あら、照れておりますわ。とても可愛らしいですわね、ペルセちゃん」
「もぅ!茶化さないでよ!!」
イアノに指摘されて、余計に恥ずかしい。ペルセは頬を膨らませて、イアノに抗議した。しかしながら、イアノはペルセの頭を撫でながら穏やかに笑うだけで、まともに受け取ってくれていない。
食事中ゆえにドタバタすることもできず、ペルセは頬を膨らませたまま、大人しく座っているしかなかった。
「…それはそうとデメナ様。今日の鍛錬はクロニオス様もご一緒、と伺っておりましたが」
「あぁ…それですか」
デメナはイアノにそう言われ、少し気まずそうにしていた。
確かに、今日は父親が来ていない。クロニオスはデメナ以上に忙しい身分であるため、それ自体は珍しいことではない。
しかし、今日はクロニオスも来ると聞いていたため、直前になって来れないと分かった時のがっかり感は大きかった。
「ペルセさんには少しお話しましたが」
「お父さんが今日来れなくなったってことしか覚えてない」
「…そうでしょうね」
ペルセは肩を落とす。デメナはそんなペルセの肩に、そっと手を添えていた。心地良くはあるが、それでも父親が直前で来れなくなったことへの寂しさは消えなかった。
「実は、エスカン国王を通じて、レボルタがこちらにクレームを入れてきましてね」
「…はい?」
デメナがあまりにも冷静に言うものだから、ヴァーレアは再び口をあんぐりと開けていた。
レボルタというと、あの会合の時にやけに無礼な態度をとっていた男か。言動がアンドレイスに似ていて不愉快だったことだけは覚えている。
「クレームって、どういうことです?何で魔界に?」
「介入したことそのものへのクレームもそうですが、何よりクロニオスさんが悪魔の魔力搾取装置を破壊したことへのクレームですね」
デメナがそれだけ言うと、ヴァーレアは盛大に頭を抱えたのだった。




