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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二章 上位の町・アスティアノ
35/67

触れてはならない記憶

 ーーーあれから、数日の時が経った。


 まだ、完全には治っていない。しかし、順調に治療は進んでいる。

 日常生活くらいであれば、問題なく動けるくらいになっていた。


 ーーー回復が早いことに関して、ハイーラは首を傾げていた。でも、昔から、頑丈さと治りの早さには、自信があった。

 …まぁ、ここまでのひどい怪我は、初めてだったが。


 マールの方も、大分良くなってきてるようだ。自分と同様、まだ治ってはいなさそうだが、本人はあまり気にしておらず、相変わらずのんびりしている。


「…あともうちょっとしたら、私も治るかな〜」

「あんたいつまでここに居座る気…?」


 今日も、ハイーラの家で食事だ。相変わらず、お店で食べるものにも劣らない、美味しい食事だ。

 食事の良い匂いが、部屋中に漂っている。


 ハイーラはマールがずっと自分の家にいることに、少し不満げだ。

 …まぁ、元々そんな長い間泊めるつもりはなかっただろうから、そりゃ不満にもなる。


「なに〜?私の家にペルセ連れて帰ればいいの〜?」

「…ぜーーーーーったい、ダメ!!あんたのあの汚い家じゃ、この子まともに育てられないわよ!」

「そういうことだよ〜」

「理由になってないわよ…」


 相変わらずな二人のやり取りに、少し笑ってしまう。実際、ハイーラの家での暮らしを知った後だと、マールの暮らしがまともでないことは、ペルセにも分かった。


 ハイーラに叩き込まれたテーブルマナーを、ぎこちなく守りつつ、食事を口に運ぶ。もう、食事マナーで注意されることも大分減った。


「…そういえば二人ってさ、昔からの知り合いなんだよね?」


 ふと、気になったことを口にしてみた。

 ペルセの声に、先程まで言い合っていた二人がこちらを見てくる。


「…えぇ、そうよ?」

「生まれも一緒だね〜。私も、元々アスティアノ…この町で生まれてるんだ〜。今はベリアスに住んでるけどね〜」


 二人は一瞬、顔を動かすことなく、視線だけを合わせたように見えた。目だけで通じ合ったのだろうか。


「じゃあ、何でマールさんだけ、その、ベリアスに…?」

「ん〜…まぁ、色々あってね〜…」


 追加で質問を投げてみると、マールは明らかに困ったような表情で、少し視線を泳がせた。ハイーラも、何も言わずに目を伏せている。


「…あ、それで思い出したんだけど〜」


 マールは何か閃いたように、手を自分の胸の前でパンと叩き、ペルセに視線を向けた。

 隣に座るハイーラは、露骨にホッとしたように息を吐いている。


「ペルセさ〜、ベリアス…あの、私の住んでる町で、何やってたの〜?」

「え…?」


 逆に、質問し返されるとは思ってなかった。思わず、間の抜けた声を出してしまう。


 なぜ、そんなことを聞くのだろう。


「…何って…?」

「ん〜…君と私が会う直前にさ、急激が乱れがあったんだけど〜。その時、君は何してたの〜?ってこと〜」


 マールと出会う前…。記憶を必死に探るが、いまいち何をしてたかは思い出せない。日数が経ってしまったからなのか、かなり朧気だ。


 思い出せるとするならーーー感情だ。


「…何か、店の奥に連れて行かれて、すごく怖いー!ってなったのは、覚えてる…」

「怖い?」

「うん…どこか、嫌なところに連れて行かれそうになってたような…。それで、気付いたら、店の壁が壊れてて…」

「ふ〜ん」


 マールは、視線も合わせず、話に興味があるのか微妙な態度だ。一方のハイーラはそんなマールと真逆で、何も言わずに、ただペルセを見つめていた。


「なるほどね〜。あの時感じた魔力乱れは、それか〜」

「…ねぇ、ペルセちゃん。追加で質問、良い?」


 納得しているマールを尻目に、ハイーラは変わらずペルセを真っ直ぐ見ながら、口を開いた。


 一体、何を聞かれるのか。思わず少し、身構えた。


「ダスノムでは、何かあったの?」

「何か…?」


 質問の意味が分からない。

 先程のマールの質問は、マールが感じたことに対するものだった。しかし、ハイーラはダスノムを見ていない。

 ーーー一体、どういうことだろうか。


 ハイーラは変わらず、ペルセをじっと見つめてくる。


「大きな出来事…何か、なかった?」


 ハイーラにそう言われ、ダスノムでの日常を振り返る。

 ダスノムではいつも、ゴミの中から使えそうなものを探し、オーレン含めた複数人で共有していた。汚かったし、食事も質が悪かったが、皆でワイワイするのは、楽しかった。


 しかし、ある時にーーー。


「…………ッ!?」


 明らかな、引っ掛かり。それが、ペルセの傷を大きく開いてしまった。

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