仲介者の論破
「まず、魔界の方々についてですが」
「テメェが送り込んだんだろうが!」
少し言及しようとしただけで、この怒り様だ。もはやレボルタの中で、ヨルゼフが魔界を招いたという事実は揺らぎようがないのだろう。
「私は確かに、魔界の王、サトゥニア陛下ともお話しましたし、私が仲介してそちらに魔界からのお手紙を送ったりはしました」
「ならばテメェが…!!」
「で・す・が。私がやったのは、あくまでも仲介。あなたが魔界の方々のお手紙の内容を読んだか否かはさておいて、魔界の方々へ返事をしなかったことも、それによって時間通りに魔界の方々が来訪されたのも、私が仕組んだことではありません」
ヨルゼフは冷静に、しかし力強くレボルタの反論を封じ込めた。
電話の向こう側で、レボルタは声を震わせている。何とか反論を探しているのだろうか。まぁ、何を言われようとも、こちらとしては、自分の把握してる事実のみで打ち返すのみだ。
「…だが!アレはどう見ても内政干渉ではないのか!なぜ止めなかったんだ、サル!!」
「内政干渉…?」
「そうだ!少なくとも魔界側は、ソロモニアという組織が国家中枢組織であることを認識していたはず!そこに介入するなど、内政干渉以外の何者でもない!!」
何とか絞り出した反論が、これか。
ヨルゼフは再び頭を抱えてしまう。同じ一国の王として、恥ずかしささえ感じていた。
「私も魔界側の考えは聞きました。その上で言わせてもらいますが、内政干渉ではありません」
「何だと…!?」
「事前の通達がなければアナタの理屈も成り立つかもしれません。しかし、魔界側は事前にお手紙を書いておりますし、私を介してそちらに送っております。そのうえで、読まなかったのか読んで無視したのかは存じ上げませんが、魔界の方々は手紙に書かれたことを実行したまでです」
ーーー敢えてこのような言い方をしたが、恐らくレボルタは読んだ上で無視したのだと推測していた。
魔界側からの報告で、ソロモニア側は当日、罠を仕掛けて迎撃してきたと聞いている。そんなこと、少なくとも手紙を読んでいなければできないだろう。
「手紙の中身は私も確認しましたし、送付の方は私自ら行いましたから、事前の通達がなかった、というのは言い訳にもなりませんよ」
「ぐ…!!」
ここまで言い切ってしまえば、いかにレボルタであっても屁理屈で責め立てることは難しいだろう。悔しそうに歯軋りをする音が、電話越しに聞こえてくる。
「何より、ただの仲介に過ぎない私では、魔界の方々の動きを止めることはできません。止める機会があったとするなら、アナタが素直に魔界からのお手紙に返事をすればよかったのですよ」
「おのれ…!!」
最後の追い討ちをかけると、レボルタの声が気の毒なほどに震えている。だが、その震えは恐怖ではなく、怒りでの震えだ。
ーーーやはり、このレボルタという男、そう簡単に変わるはずもない。ヨルゼフは小さくため息をついた。
「で、続けて研究者の件ですね」
魔界からの介入について、言いたいことは全て言い切った。次の話題に移るとしよう。
ヨルゼフはレボルタを無視し、あっけらかんと言い放った。




