人間界からの帰還
「ならば、俺らのやってることに文句をつけられる筋合いはねぇな」
「なに!?なぜそうなるのだ、盗人風情が!!」
クロニオスは話を切り上げようと、そのまま立ち去ろうとする。しかし当然、レボルタが黙ってるわけはない。クロニオスのスーツの裾を掴んで、引き止めている。
クロニオスの誘導尋問も上手だったとは思うが、墓穴を掘ったのは完全にレボルタ自身だ。それを、本人が自覚してない。
ーーーハッキリ言えば、滑稽に見える。
「…分からないのですか?私達は、アナタのその理屈を適用して、ここに赴いただけですよ」
「何だと…!!」
だからこそ、助け舟を出してやる。これがせめてもの情けだ。デメナは帰り道につきながらも、レボルタへ話しかける。
「貴様が先程自分で言っていただろう。『その国に住まう者の扱いは、その国が決めること』だと」
キマエが抱えていた首領を降ろしながら、冷徹に話す。首領への扱いは、怪我をさせないようにしてるだけで、丁寧なものではなかった。
双方向から挟まれるように声をかけられたレボルタは、キョロキョロしながら、デメナとキマエを交互に見ていた。
すると、そんなレボルタの肩に、サブリナが優しく手を置いた。
「追放など、国の責任放棄になるのじゃろ?ならば、ワシらも責任を果たすために、追放した悪魔を呼び戻さねばならぬ。頭の悪いワシでも、そのくらいのことは理解できるぞ?」
サブリナのその言葉にすら、レボルタは言い返せなかった。
政治が嫌いで、細かい事務作業なども基本的にやらないサブリナでさえ、レボルタを理詰めする側に回っている。その光景を見て、クロニオスは静かに口角を上げた。
「そういうことだ。魔界の民である悪魔の扱いは、魔界の王であるサトゥニアが決める。追放という罪を取り消し、魔界内部で裁く。…貴様の理論だ、文句はあるまい」
クロニオスはそう言うと、そのままレボルタの横を通り過ぎていった。デメナ達も、それについていくように王宮の出口へと向かった。
ふと、デメナが後ろを見る。レボルタの肩が震えている。顔が屈辱と怒りで歪んでいる。あのザマでは、とても一国の国王だと信じることはできない。
「…少し、やりすぎましたかね?」
ふと、そんな言葉が出る。レボルタへの同情は一切ないが、四人がかりで詰め寄ったのは、さすがに少し大人気なかったかもしれない。
だが、クロニオスとサブリナは、鼻で笑った。
「何言ってんだ。何なら、あんだけ徹底的にへし折っても、まだ文句言ってくるだろうとすら思ってるぞ」
「ワシも同意じゃ。あの手の輩は、戦でも論理では変に折れぬ。リドンもそうじゃったじゃろう?」
「…お前の場合は、そもそも戦場で理詰めするだけの頭脳もないだろ」
「やかましいわ。そもそもワシは理詰め役でもない」
リドン。
十年前、ダスノム改革に反発し、戦争まで引き起こした、かつてのゴエティフス家の幹部。
戦争終結後にイアノ主体となって話をし、様々な方向からリドンを変えようとしたが、確かに最後の最後まで変わることはなかった。
「俺らがやるべきことはやった。ソロモニアはこれでかなり弱体化する」
「…それもそうですね」
一行はそのまま、ドゥローラ王国の王宮から出ていくのだった。




