誘導尋問
「貴様ら!!魔界の使者を取り逃がしたどころか、地下牢にまで連れて行ってしまっただと!?他の研究員を追い出してまで研究所を全部貴様らに託したというのに、何だこのザマは!!」
レボルタが感情的になりながら叫んでいる。
レボルタの言葉に引っかかるとこがある。「他の研究員を追い出して」と言っていたが、どういうことなのか。自分自身も魂魄の干渉に関して分析を続けてるデメナとしては、そんなことをされたら見限るだろう。
だが、ここはそんなことを追求する場所ではない。もう、こちらの用事は済んだのだ。叫び続けるレボルタの背後で、クロニオスがゆっくりと口を開いた。
「おい。あんたが、ドゥローラの国王か」
「あぁ!?」
声をかけられたレボルタは、イライラした様子で振り向く。そして、クロニオスを見て言葉が止まった。
スーツで着痩せしているサトゥニアと比べると、クロニオスは分かりやすく筋肉質で、着ているスーツもパツパツだ。その上で大柄であり、強面。そんな男に背後を取られたとあっては、驚くのも無理はないだろう。実際、娘のペルセでさえ、初めてクロニオスと会ったときは、怖がっていた。
「…あ、あんたは…」
「魔界からの使者の、クロニオスだ。手紙でも通達した通り、囚われた悪魔を取り戻しに来た。もっとも、もう用事は終わったから、今帰るところだが」
「貴様…!!何を勝手な…!!」
「勝手?」
クロニオスの言葉に、レボルタの怒りのボルテージが上がっているようだ。
すでに用件は済んだというのに、これ以上何をするというのか。状況次第では、レボルタの魂魄を抜く必要があるかもしれない。デメナは注意深く観察することにした。
「あれは我々の財宝だ!!政務の中核だ!!それをいきなり奪うなど、内政干渉に他ならん!!」
「…『いきなり』じゃねぇだろ。会合で魔王からも忠告したと聞いてるし、エスカンという国を通じて、貴様らに手紙でも通達した。承諾も拒否もせず、無視したのは貴様の方だ」
クロニオスは呆れたように大きくため息をつく。
わざわざ説明してやる義理もないだろうに、クロニオスはきちんと理論立てて話をしている。
その理論に対して、レボルタも一瞬黙り込んだ。そこへ、クロニオスはさらに畳みかけた。
「聞いた話によると、お前はエスカンという国が捕らえたソロモニア組員達の引き渡しを求めてるそうだな。他国で罪を犯したとしても、自国に呼び戻すべきだ、と。そう認識していると聞いたが」
「当然だ!!その国に住まう者の扱いは、その国が決めること!例え旅行などで一時的に離れてようとも関係ない!!罪を犯そうが、自国の民である!!」
一見すると、自国民を想う、慈悲深い王の言葉だろう。しかし、レボルタはそれをエスカンに囚われたソロモニアの組員に適用している。
「…どんな罪を犯してようともか?」
「そうだとも…!追放など、罪人を裁くという国の責任を放棄してると言っても過言ではない!!」
「そうか」
ーーー決定的な一言だ。
クロニオスがこちらへ視線をだけ向けてくる。
まるで、「今の発言、聞いたよな?」と言ってきてるかのようだ。
サトゥニアを疑っていたわけではない。だが、今この場にいる四人が、全員その耳でレボルタの理屈を直接聞いた。
デメナとキマエ、そしてサブリナでさえも、クロニオスの意図を察して、静かに頷くのだった。




