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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十章 ソロモニア制圧戦

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契約解除

「この契約書は、この男のものですね」


 デメナが契約書を確認しながら、牢獄にいる者へと視線を向ける。


 かび臭さや排泄物の匂いが籠もっており、酷い環境だ。だが、魔力を限界まで搾り取られており、痩せこけている。


 名前を確認すると、かつてアスティアノで身内を複数人撲殺した、それなりの貴族生まれの男だ。百年ほど前に魔界から追放されている。悪魔を撲殺できるほどには体格も筋肉もあったのだろうが、今では見る影もない。


 倒れている男に近寄ろうとするも、結界のようなものが張られている。先程ソロモニア側が自分達を拘束するために使った、空間拘束術式だろうか。


 先程同様に、力で解除することも可能だ。だが、ここは牢獄だ。あまり派手にやられると困るだろう。


「…クロニオスさん」

「おう」


 穏やかに結界や契約による魔力拘束を破壊するためには、自分がやるかクロニオスの魔力を借りるかの、どちらかだろう。


 呼ばれたクロニオスが、デメナの隣にやって来た。クロニオスが自身の手に、白色の魔力を集めたうえで、結界にかざす。


 すると、クロニオスの魔力に頭を垂れるかのごとく、結界を維持する魔力が霧散していく。


 やはり、格下の魔力の存在を認めない性質を持つ『魔王の資質』は、人間の魔力に対しても有効なようだ。この力だけは、デメナにも理解しきれない、異常魔力だ。


 結界が解除されても、中にいる男は特に反応を見せない。そもそも、意識がないのであろうか。


「転送準備だけしておく。解除は任せるぞ」

「えぇ、助かります」


 デメナはクロニオスに礼をいうと、目の前の契約書に意識を向ける。


 契約書そのものに、悪魔を縛り付けてる魔力が宿っていた。この紙に込められた束縛魔力こそが、悪魔をこの組織に無理矢理従わせ、魔力を搾り取っている。

 強い悪魔なら抵抗することも不可能ではないかもしれないが、悪辣なソロモニアのことだ、先に念入りに拘束したのかもしれない。


 ーーーだが、その術式は、明らかに粗い。百年程前に無理やり契約を結ばせたあと、そのまま術式を更新していなかったのだろう。

 先程自身が解析した、ソロモニア最新鋭の拘束術式よりも、解体は楽だった。


 デメナが解体を進めると、契約書に薄く張られている魔力の膜に、ドンドンと亀裂が走り始める。


「何じゃ、デメナは手品でもやっているのか?」

「恐らく、違うかと…」


 後ろで首領の監視をしているサブリナが、茶々を入れてくる。それを、キマエが穏やかにたしなめている。


 確かに、手に持った契約書に張られてる魔力膜が、何もしていないのにも関わらず、ひび割れていく光景は異様だろう。自分としては、解体した結果壊れていっただけに過ぎないのだが。


 魔力膜の欠片が、ボロボロと剥がれて落ちる。それに伴い、倒れてる男の周りに纏わりついていた束縛魔力も、完全に崩壊してしまった。


 ーーー契約、解除完了だ。これでこの男は、少なくとも人間に搾り取られる側の悪魔ではなくなった。


「…悪魔本人が本心では不同意だったからこそ、これだけで解除できるんですよね」

「だろうな。お互いが認め合ってんなら、そもそも束縛がいらねぇしな。外部からの働きかけで解除はしにくくなるが」


 デメナが何気なく呟いたクロニオスはそう言いながら、男の下に赤い転送陣を敷く。

 少しすると、男の体が赤い光で包まれ、気づいた時には姿が消えていた。


「どこに転送されたんです?」

「魔界の地下牢区画。罪人だから、相応に扱うだけだ」


 クロニオスはそう言うと、ゆっくりと空になった牢獄から出てきた。

 デメナも、契約書類を一枚めくる。そこには当然、別の悪魔の名前が記されていた。


「次はどいつだ?」

「ご案内、してくださいますよね?」


 ソロモニアの首領から抜き取った魂魄を片手に握り、再びプレッシャーをかける。

 脅しのようなことは好きではないが、逆らう気など起こさせる気は、さらさらなかった。


 首領は不満げにしながらも、こちらを案内してくれるのだった。

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