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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十章 ソロモニア制圧戦

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醜悪すぎる施設

「…罪人を捕らえることそのものはいいとしても、これは酷いな…」


 軍人という仕事柄、捕虜となった者達を散々見てきたであろうキマエでさえ、この反応だ。やはり、この環境は余程酷いのであろう。


「…この音は?」

「音?」

「遠くから機械音が聞こえてきます」


 デメナに言われて、改めて耳を澄ます。すると確かに、こもった音ではあるが、機械の駆動音が聞こえてくる。この空間の奥の方からだ。


 こんな環境下で、機械を動かしている。地下施設でもあるのだろうか。


「…この音は何ですか?この奥に、機械室でもあるので?」

「こ、この部屋の換気装置が…」

「ダウト。半分しか言えていないようですよ」


 首領の解答に対し、デメナはバッサリと切り捨てた。

 あまりにハッキリ言い切るものだから、首領でさえ戸惑った表情を浮かべていた。


「魂魄には、本人の感情も揺らぎとして表れます。アナタが隠し事をしていることも、お見通しです」

「ぐ…っ…!!」


 デメナは自身の手中にある魂魄を眺めている。やはり、デメナの前では魂魄が丸裸にされてしまうのか。


 首領は悔しそうに歯軋りをしていた。


「…追加で何かあるかもしれねぇな。調査させてもらう。デメナ、どっちだ」

「あちらから聞こえてきます」

「よし、行くぞ」


 クロニオスはそう言うと、デメナの案内に従い、牢獄の中を歩く。


 道中、投獄されている悪魔達を何人も見た。だがその全てが、足音に気づく様子すらない。本当に生きているのかと疑いたくなるほど、動きが全く無い。


 百メートルほど歩くと、機械の駆動音がより大きく聞こえてくる。洗濯機のような、巨大なモーターの回転してるような音だ。


「この扉の先ですね」


 デメナの視線の先には、また別の扉がある。確かに、この扉の先から、くぐもった駆動音が聞こえてくる。


 その扉を、クロニオスは蹴破るように開けた。


 扉の蝶番が壊れたが、そんなことは気にならない。クロニオス達は、その扉の先を見て、絶句した。


「何だよ、こりゃ…」


 中を見ると、本棚の中にところせましと書籍が並んでおり、書斎に見えなくもない。それぞれのカテゴリごとに整理されてるようで、書類探しに困ることはなさそうだ。

 だが、何よりも目につくのは、大きなガラスのタンクと、そこに蠢く魔力の塊だ。


「…不審ではありました。ラウラさん達のように相互理解をしているのならばともかく、ソロモニアやドゥローラのような考え方の持ち主が、悪魔と肉体共有してまで悪魔の力を欲するのか、と」


 その光景を見て、デメナが前に出てくる。そして、ガラスのタンクに手を触れた。


 中に入っているのは、濃縮された悪魔の魔力だ。それくらいは、クロニオスにも分かる。だが、デメナはどうやら、もっと深いところを見ているようだ。


「契約を結んで無理やり隷属させた悪魔を、牢獄で監禁し、その魔力を死なない限界ギリギリまで搾り取る…。この部屋は、空間丸ごと悪魔の魔力タンクである、ということですね」


 デメナはそう言いながら、本棚にある本を一冊手に取り、パラパラと中身を見始めた。


 何が書かれているのか。不思議に思っていると、デメナはその本の中身を、こちらに見せてきた。


「そして、その魔力を使って、下手をすると悪魔の肉体も使い、人体実験。本当に、悪魔の『力』しか欲していないことが、丸わかりです。自分は何も苦労なく、悪魔の巨大な魔力を扱いたいと」


 中身を見ると、確かにクロニオスにも分かった。悪魔の身体構造の分析、魔力の質の解析、そして悪魔への直接的な薬剤投与。


 ーーーとても、看過できる代物ではなかった。


「契約書類も、ここにあるようですね」


 さらに、デメナは別の本棚から複数の書類を持ってきた。枚数にすると、二十枚ほどか。


 羊皮紙でできた書類は、確かに人間と悪魔の間で結ばれる契約の体裁をとっている。だが、その中身は、クロニオスが知るものからはあまりに乖離していた。


「人間への無期限完全従属、魔力は余すことなく献上、そして生きる権限…生殺与奪までも、人間側に渡すことが明記されています」


 デメナがそう言いながら首領の顔を見ると、首領は震えているようだった。だが、それでも納得はしていないようで、喚き始めた。


「何が、悪いんだ…!!」


 その瞬間、その場の空気が凍ったのだった。

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