デメナの尋問
ソロモニアの首領を名乗る男は、震えながらデメナを見ている。
デメナは何も言うことなく男に対して手をかざした。
すると、男の目つきが明らかに変わる。その目つきは、完全に警戒の目つきだ。だが、デメナの手が男に触れることはなかった。
しかし、少しすると、男が慌てたように周囲を見回し始めた。
「な、何だ!?貴様、何をした!?」
「イアノさんに接触したのなら、あなたの部下から報告くらいは受けていますでしょう?」
気づいた時には、デメナの手に白色の小さい塊が握られていた。
ーーーあれは、魂魄か。実際に、デメナが相手の魂を抜き取ってる姿を見るのは、久し振りだ。
仮に魂魄に触れられれば、それは本体への接触と同じことを意味する、と聞く。デメナは男から抜き取ったと思われる魂魄と、男の顔を交互に見ていた。
「首領さん、二度目の質問です。ソロモニアという組織が捕らえた悪魔は、どこにいるんですか?」
「だ、誰が言うか…!!」
「…そうですか」
首領が拒絶の意志を示すと、デメナは掌のうえにある魂魄の欠片を少し摘む。
すると、首領が自身の左腕をしきりにこすり始める。どうやら、魂魄の中でも左腕に対応する部位に触れているらしい。
「…意識を保ったまま、己の生殺与奪を他人に握られる気分はどうですか?」
「貴様…!!」
首領がデメナを睨みつけているが、デメナはどこ吹く風と言わんばかりにそれを無視している。
ーーーやはり、デメナの能力だけは世界観が違う。
もし本人がその気になれば、相手の左腕を永久に動かせなくする、というようなことも不可能ではないのだろう。
「三度目の質問です。あなたがたが捕らえた悪魔の監禁場所を教えてくださいますか?」
「や、やめろ…!分かった、言う…!言うから…擦らないでくれ…!!」
デメナはそう言いながら、摘んだ一欠片を、ゆっくり指ですり潰すような動きをしている。
その感覚が、ダイレクトに首領の左腕に伝わってしまうのだろう。首領は冷や汗をかきながら、デメナに懇願する。
ーーー恐怖は相当なものだろう。体に触れられる感触は確かにあるにも関わらず、どこから触られてるのか、誰が触ってるのかが一切視覚情報から結びつけられないのだから。
「敵に回したくねぇな…」
「全くじゃ」
クロニオスが何気なく呟くと、隣でずっと見ていたサブリナが呆れ気味に答えた。
サブリナも物理戦闘では一線級の強さだし、敵に回したら非常に厄介な相手だ。だが、デメナに関しては、能力を知らなければ対策の練りようがない。
ーーー分かっていたつもりだったが、改めて自分の妻の能力が異質であることを突き付けられた。
「ボス!!正気ですか!!そんなことしたら…」
「文句があるヤツは前に出ろ。俺が相手してやる」
ソロモニアの組員達が抗議の声をあげようとしたが、未だに団員を片腕で持ち上げたままのキマエが低い声で挑発する。
しかし、キマエの前に出てくるほどの猛者は、現れることはなかった。キマエは落胆した様子で、持ち上げていた男を、雑に放り投げた。
「案内、してくださいますよね?」
「なぜだ!テメェらで…」
「してくださいますよね?」
「いでぇっ!?」
デメナは魂魄を握ったまま、首領に問いかける。
最初は拒もうとしたようだが、デメナが低い声で迫りながら、魂魄の欠片を摘む指に力を込めると、首領は悲鳴をあげた。
体の内側から、押し潰されるような感覚。恐らくデメナは首領にそれを意図的に与えている。そんなものを与えられては、首領も逆らう気がなくなってしまったようだ。
「こ、こっち、だ…」
首領は歯軋りしながら、王宮の奥の方へと歩き始めた。
クロニオス達はその後についていくのだった。




