悪辣なソロモニア
しばらく待つと、柱の陰や扉の向こう側から、黒いローブを深くかぶった男達がゾロゾロと現れる。
ーーーこいつらが、ソロモニアの組員か。
今回のトラブルの直接の要因。そして、ペルセの留学を中断させ、ペルセを傷付けた連中。
本来ならば、すぐに拘束を引きちぎり、ぶん殴ってやりたい。腸が煮えくり返るような感情が、ふつふつと湧き上がってくる。
「…クロニオスさん、抑えてください」
「分かっている…」
デメナの冷静な声が聞こえてくる。だが、その声にも、隠しきれない憤怒が滲み出ている。
クロニオスは何とか怒りを抑え込み、目の前に現れた魔術師達を睨む。
「かかったぞ!!貴様らが魔界の使者か!!」
「こんな悪魔をも捕らえられるとは…!」
「やはり所詮は悪魔か…」
「これでレボルタ様にもよい捧げ物ができる…」
ソロモニアの魔術師達は口々に、目の前の成果を喜んでいる。
ーーー滑稽なものだ。こちらがわざと捕まってやっているだけだということに気付いていない。そんな様子を見ると、何だか逆に冷静になってしまう。
まだ、弱いふりをしておかなければならない。クロニオスは低い声で、口を開いた。
「…お前らが、ソロモニアか…。魔界から来た客人をいきなり捕らえるとは、随分と無礼なおもてなしだな…」
「無礼?悪魔に礼儀など必要なのか?」
ーーー随分と言ってくれる。
やはり、ドゥローラという国のスタンス、ソロモニアという組織のスタンスは、この期に及んで変わる気配がない。
「それよりも、今後の心配をしたほうがいいだろうよ。お前達はこれから、俺達の使い魔として永久に使われる存在になるのだからな」
一人の男がそう言いながら、何かを合図する。すると、奥の方からいくつかの鉄柱を入れた籠を持ってきている。
ーーー手枷の代わりだろうか。それにしては、それなりに重量がありそうだ。自分やサブリナ、キマエなら全く問題がなさそうだが、フィジカルで劣るデメナにつけられると面倒だ。
「…何をするつもりだ」
「いらぬ反乱を起こされても困るのでな。監禁する前に、枷をつけるのは当然だろう?」
「監禁…。どこに閉じ込めるつもりだ」
「言う義理はない」
ソロモニアの魔術師達は、巨大な鉄柱を持って近寄ってくる。やはりそれなりに重いらしく、数人がかりにも関わらず、引きずるようにしか運べていない。
すると、キマエがゆっくりと口を開いた。
「我々をどう扱うつもりだ。契約でも結ぶつもりか」
「そうとも。貴様らは我々に、未来永劫服従する契約を結ばせる。歯向かえば、その拘束が貴様らの体を締め上げ、引きちぎることになる。大人しくしているのだな」
ーーーなるほど。
先程から自分達を拘束している鎖が、身体を締め上げてきているのは、気の所為ではないのか。
そうなると、悠長にはしていられなさそうだ。
「デメナ、そろそろ反撃に転じる」
「分かりました。こちらはすでに、準備ができています」
「サブリナも、構わないな?」
「思ったよりも早いのう」
「キマエも、大丈夫だな?」
「いつでもいけます」
クロニオスは三人それぞれに確認を取った。
ーーーさぁ、反撃開始だ。




