罠にかかった獲物
ーーーおかしい。
門番は確かにいたのに、中に兵士がほとんどいない。
正直、守衛を突破したとはいえ、あの態度から察すると、レボルタ側は自分達のことをほとんど共有していないはず。
ならば、不審者が四人も来たという状況ならば、兵士が集まってきても不思議ではないし、ここで戦闘が起きることは想定していた。
罠でも仕掛けられているのだろうか。あったとしても突破は不可能ではないだろうが、面倒事が増えてしまう。
「…王宮の中。魔力の流れが不自然です。恐らく、地雷式の何かが、入り口に仕掛けられているかと」
同じことを、デメナも考えていたようだ。だが、さすがはデメナだ。感知能力という点でも、クロニオスを上回っている。
「分かった。ならば、そこを避けるか」
「何じゃ、逃げるのか?クロニオス」
遠回りになるかもしれない。そんなことは承知の上で、迂回しようとした。だがそれが、サブリナのプライドに触れた部分があったようだ。
サブリナは鼻で笑いながら、言葉を紡いだ。
「ワシ一人なら、罠なんぞかかった上で破壊し、敵を翻弄してやるがのう」
「今回は任務だ。遊んでる場合じゃねぇ」
「…真面目に言うとな、罠を仕掛けるということは、そこを突破されたくないということじゃ。戦争において、重要拠点の守りを厚くするのと同じ理屈じゃよ」
ーーー正論ではある。
囮である可能性も否定はできないにしても、普通は守りたいものがある場所の守りを厚くするのが、戦略の基本だ。
「…積極的に罠にかかることはお勧めしませんが…私も、罠の先に重要なものがある、ということそのものには同意です」
「罠を通るルートが最短ルートのようです。罠の先に、悪魔達の魂魄がいくつか感じ取れます」
キマエとデメナまで加わってきた。
このメンバーなら、罠にかかっても対処はできるであろう。
それに、ペルセの親として、被害に遭いかけた娘の両親として、一泡吹かせたいのも本音ではあった。
「…分かった。正面から殴り込んでやるとするか」
「おうおう。そうこなくてはな!」
クロニオスの宣言に、サブリナが嬉しそうにクロニオスの肩を叩いてくる。
キマエもサブリナほど露骨ではないが、口角が上がっているのが見える。やはり、この二人の根っこは同じ脳筋だ。
「失礼するぞ」
クロニオスはそんな二人を尻目に、王宮の大きな扉を開き、中へと入った。
王宮の中にも、不自然なほどに人がいない。辺りを見回すと、魔界ほどではないが、それなりに豪華絢爛な内装が目についた。
「…デメナ。悪魔どもはどっちだ?」
「あちらに感じます」
「兵士の生体反応は?」
「この近辺にはいません。少し離れたところにいるので、隠れて様子を見ているのかと思われます」
「…誘き出すしかなさそうだな」
デメナの感知を頼りに、ゆっくりと王宮の奥へと進んでいく。そんな二人の後ろを、退屈そうなサブリナと周囲を警戒するキマエがついていく。
クロニオスが何気なく部屋の中央の床を踏んだ、その瞬間だった。
辺りから鎖が伸びてきて、そこに加えて空間ごと内部を強烈に拘束する魔力術式が展開された。
ここで破壊してもよかったのだが、クロニオスはあえて捕まった。デメナもサブリナもキマエも、クロニオスの意図を察したのか、全員抵抗を見せることなく捕まってしまった。
ーーーさぁ、来い。
クロニオスは拘束されたまま、周りを見回すのだった。




