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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十章 ソロモニア制圧戦

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守衛突破

 しばらく歩くと、城壁に囲まれた大きな王宮と、その前に立ちはだかる大きな門が見える。


 ーーーこういう外面の部分だけは、ちゃんと王国の王宮だ。クロニオスは内心少し呆れていたが、それでも歩みを止めるつもりはなかった。


「待て。貴様ら何者だ」


 すると、門の横に立っている守衛に、入口で止められてしまう。守衛は門を塞ぐように、持っていた槍を垂直に交錯させている。


 ーーーやはり、聞いていないようだ。国王ですら、恐らくまともに手紙を見ていないのだろう。


 だがそれでも、ちゃんと手続きを踏まなければならない。クロニオスは懐から、実際にエスカンを通じてドゥローラへ出した手紙のコピーを取り出した。


「我々は魔界より来た悪魔だ。レボルタ・ドゥローラに今日この時刻に来ることを、手紙で通達済みだ。疑うならば、エスカン王国のヨルゼフ・エスカン陛下に確認してくれて構わない」


 クロニオスは手紙を守衛たちの前に差し出した。だが、守衛はあろうことか、その手紙を見て、つばを吐きかけてきた。


 吐かれた唾が、手紙に付着する。手紙が濡れて、紙が少しふやけてしまった。


「…客人に対して、その態度はどうかと思うが」

「貴重なブツを持ってきた商人ならいざ知らず、そうでないなら人外は通せねぇな。エスカンの国王が証人とか言ってたが、そこに何の価値もない。つまり、お前らは客ですらねぇよ。ほら、帰った帰った!」


 守衛はそれだけ言うと、まるで厄介者を払うかのように、シッシッと手を動かした。


 後ろに立つサブリナが怒らないか心配だったが、サブリナはそもそも話を聞いていない様子で、空を眺めながら「明るいのう…」とか呟いている。

 本来なら集中しろ、と叱り飛ばすところだが、今回に限っては助かった。


 クロニオスは手紙についた唾を拭き取り、手紙を懐に戻した。


「…そうか。ならば、遠慮する必要もねぇな。デメナ」

「はい」


 こんな態度をとるなら、穏当に入る必要もない。

 だが、迂闊に戦闘を起こす気もない。ゆえに、クロニオスはデメナを呼んだ。


 デメナは短い返事とともに、守衛達の方へとゆっくり近付く。


「何だ、あんたは。色仕掛けでもして取り入ろうってのか?」

「…いや、でも悪くねぇな。この女、美人だし。可愛がってや…」


 下品な言葉を続けようとした守衛二人は、デメナに近づかれただけで、まるで意識がパッタリと途絶えたように、その場に崩れ落ちてしまう。


 相変わらず、驚異的な能力だ。からくりが分かればシンプルだが、外から見ると本当に意味不明だ。


 魔力を介し、相手の魂魄に干渉し、魂魄の内部にある『意識を保つ』部分に直結する部分をピンポイントで一時遮断する。デメナがやってるのは、そんな繊細な操作だ。


 正直、理屈は理解できても、自分にすら真似できるものではない。


「…とりあえず、一時間程度気絶させておきました」

「ご苦労」


 妻に卑猥な視線を向けようとしたことは、夫としては看破できるものではない。だが、そんな小さなことを気にしてる場合でもない。


「サブリナ、いつまでボケっとしてる。行くぞ」

「んぁ?終わったのか…全く、退屈じゃ」

「…任務が終わったら、俺と組手でもするか」

「よいのか!?」


 ーーーコイツは昔から、分かりやすい女だ。クロニオスの一言で、一気に目が輝いた。


 思えば、サブリナとの出会った時も、最初の頃は殴り合ってた記憶しかない。あの時から、サブリナは何も変わっていないのだ。


 後ろをついてくるサブリナを気にしながら、クロニオスはそんなことを考えていた。


 守衛を昏倒させた一行は、王宮の中へと入っていくのだった。

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