レボルタ最大の愚策
一方、人間界のドゥローラ王国。
会合が終わって以降、国王レボルタ・ドゥローラは荒れていた。
「クソ!!あの低能猿と使い魔風情が!!」
レボルタはそう言いながら、使用人を呼びつけるために鈴を乱暴に鳴らした。
少しすると、息を切らしながら執事服の使用人が走ってきた。
「陛下。お呼びでしょうか」
「ソロモニアの連中を呼べ!全員だ!!」
「ソロモニアを、ですか…?しかし連中、先日の事件で、団員の三分の一程がエスカンに囚われたと聞いていますが…」
「関係あるか!!いいから呼んでこい!!悪魔の贄に捧げられたいのか!!」
「…御意!!」
執事が慌てたように飛び出していった。
ソロモニアの連中は、確かに少なくない人数がエスカンに囚われてしまった。あの者たちは、ドゥローラという国の民だ。あの猿の国に捕らえる資格など、どう転んでも出てこないはずだ。
にも関わらず、エスカンの連中は、捕らえたまま返すつもりがないらしい。それが、とてつもなく不愉快だ。
しかもそこに、魔界から来たとかいう、よく分からない男もいた。あの風貌からして、人間ではなく悪魔である、ということだけは分かった。
そんな男から、自分達が保有している悪魔を取り返す、と言われたのだ。
「…余所者風情で、内政干渉なんぞ匂わせやがって…」
本来、とても看破できるような発言ではない。だが、あの男はこちらの文句を聞こうともせず、そのまま立ち去った。
なんと無礼な男だ。あれが魔界のトップだというのなら、やはり悪魔という種族を対等に扱う必要はない。レボルタはそう確信していた。
「クソが!!」
レボルタは気分が落ち着かず、玉座に座ることなく、王宮の柱や壁を殴ったり蹴ったりしていた。
しばらくすると、ソロモニアの魔術師達がゾロゾロとやってくる。全員が一堂に集まることは少ないのだが、やはり少なく感じてしまう。
「…ソロモニアの者たちよ。俺は貴様らを信じている。魔界のどんな悪魔をも従える、最強の契約術式を結べるのだろう?」
「鋭意開発中でございます、国王陛下。先日の戦闘で得られたデータも含め、改良を重ねております」
「見せてみろ」
レボルタの要求に、ソロモニアの魔術師の一人が、一枚の丸められた羊皮紙を差し出した。
レボルタは静かに、その羊皮紙を広げる。中には細かい術式の構造や、その作り方などが書かれていたが、理解は困難極まるものであり、レボルタは何も言わずに返却した。
ソロモニアの連中は、昔から何を考えてるのか分からない。だが、悪魔の力の扱い方を、こちらに教えてくれることで、長年治世の安定に貢献し続けてきている。それだけで、信用するには十分であった。
「急ぎで頼むぞ。もっと強い力を得なければならないのでな」
「承知しております。我々も同胞が理不尽に猿に囚われ、憤慨しておりますゆえ」
「王宮の研究室を全て使っても構わん。貴様らの研究は、国家維持のための最優先事項だ」
「ありがとうございます」
「話は以上だ。明日には、ここの研究室を開放しておく。自由に使え」
レボルタはそう言うと、ソロモニアの魔術師達を帰らせた。
そして、ゆっくりと玉座の間を出発する。
研究者たちからは、文句が出るかもしれない。だが、治世の維持のためだ、そんな雑音は関係ない。
だが、レボルタは気付かない。
崩壊の序曲は、すでに鳴り始めていたことをーーー。




